一般的に、お金持ちは幸せと考えられがちです。もっと資産があれば、給料が高ければ、幸せになれるのに……そう願う人は多く、またそれを幸せと考える人は多々いるでしょう。幸せなお金持ちはたくさん存在します。しかし、お金があればあるほど不幸になっていく人々も存在します。モナコ在住の著者が、自身の目でみた超富裕層たちの行動から、その分かれ目について解説します。
※写真はイメージです(写真=iStock.com/damircudic)

お金持ちが幸せとは限らない

モナコに集まるスーパーリッチな人たちのライフスタイル、そしておもてなしは世界的に見ても並外れています。

ある時、私は世界一大きいと言われるモナコのヨットショーのために寄港していた、スーパーヨットで開かれた夜のパーティーに招かれました。靴を脱いで船内に入るので、ドレスアップをしてヒールを履かないという素足のパーティーはちょっと刺激的です。

船内に入ると、高級ホテル以上のラグジュアリーな空間が広がり、陸とは比較できない美しい海の景色が広がります。これだけの船を管理するために、専用のキャプテンと20名のクルーが常時乗船していることでした。一体どれだけの経費がかかることか。こんなスーパーヨットを所有する人はどんな人なのかと尋ねたところ、キャンドルビジネスで富を得たアメリカ人と教えてくれました。

この日オーナーは不在でしたが、100名ほどのゲストを招き、スタッフが暖かくおもてなしをしてくれました。オーナーの懐の深さが伝わってきて、これこそ、女性なら誰もが憧れる幸せなお金持ちの世界ではないでしょうか。

――ただし、お金持ち全員がそうとは限りません。今回はモナコ公国で出会った、超リッチだけれども180度違う人生を送る人々をご紹介させていただきます。

8人の養子を育て上げたマダム

私はモナコ公国に住み始めた頃、セレクトショップの店員をしていました。そこのマネジャーと仲良しのマダムは、おしゃべりをするために、よくショップへ遊びにきました。来る度に、これはマイアミのお土産よ、コモの別荘で獲れた果物よ、我が家のワインよ、と必ず何かを持ってきてくれます。それもかなりセレクトされたものばかり。彼女はとても余裕のある生活をしていて、二度目の結婚で一緒になったお相手と、世界中から恵まれない子供達を8人も養子にしていました。ある日彼女が見せてくれた写真には、黒人、白人、アジア人と国際色豊かな兄弟たちが並んでいました。そのお子さんたちも今では立派に成人され、いつも子供達のことを自慢されています。

「人よりも裕福な生活をさせてもらっている私にできることは、夫をサポートすることと、恵まれない子供達を養子に迎え、きちんとした教育を受けさせること」だと話してくれました。実践しようと思ってもなかなか真似のできることではありません。来店するたびに、店員ひとりひとりに声をかけてくれるマダム。そんな彼女のことがみんな大好きでした。まだ20代だった私は、世界にこんなに心の広い人がいるのかと驚かされるばかりでした。

95歳になっても困っている人を助ける

もう一人、モナコの赤十字社でグレース・ケリー皇妃の秘書を務めていたマダム・レジーヌ。彼女は、世界に5000人しか存在しないモナコ国籍を所持する「モネガスク」です。モネガスクと呼ばれるには、先代がモナコに居住、モナコに生まれ、10年以上モナコに住んでいることが条件。モナコ人として生まれるだけで、国から保護を受けることができるので、住居や職に困ることなく、一生優雅にモナコで生活することができます。

彼女は、モナコ人が世界に発する慈善団体をつくってもらいたいと皇妃から頼まれ、慈善団体アミチエ ソン フロンティエー インターナショナル(国境なき友好団)を設立しました。皇妃の願いの通り、その活動はヨーロッパ、アメリカ、アジアと世界に広がっていきました。日本支部も5年前に設立され、95歳になるマダム・レジーヌは、毎年来日されています。「私は恵まれた人生を送らせてもらっています」と、マダム・レジーヌは言います。感謝を忘れることなく、困っている人に手を差し伸べてあげられる存在でいたい。何かをもらったら、周囲の人と分かち合い、喜びをシェアしたいと常に言い続けています。恵まれているからこそ、慈悲の心を忘れず、周囲に愛を与え続ける95歳の女性の意思の強さに、学ばされるばかりです。

巨万の富を得て人間恐怖症に

残念ながら、このような幸せなお金持ちと対照的に、お金があることで、不幸になる人がいるのです。モナコで有名な銀行家のM氏は、巨万の富を得たために、人間恐怖症になってしまいました。リタイアしてからも、モナコの自宅を出る時は必ずボディーガードをつけ、パーティーなどで人が寄ってくると自分の財産目当てに近寄ってきたと思い込み、友人もいない生活だったそうです。幾度もの結婚、離婚を繰り返し、子供もたくさんいて、裏切りや騙されたことを振り返ると、自分が信じられるのはお金だけになってしまいます。しかし最後は、そのお金に苦しめられ、ノイローゼ状態で自殺をしてしまいました。何という、お金に翻弄された人生の結末でしょうか。

また、お金があってもケチで有名な人もいます。世界数カ所に大豪邸、クルーザー、高級車を所有するA氏。ビジネスの成功で優雅な生活を手に入れたものの、人を招いたり、招待することが大嫌いな彼。レストランでもわがままばかりで、いつも店員さん達がピリピリしながらサービスをしています。何につけても満足をすることができないのです。お金があり過ぎるためにわがままになってしまった結果、他人を愛することも愛されることもなくなってしまったのです。財産はつくりあげたとしても、人間として一番大切なものを失ってしまったのでしょう。

お金で人生が狂う人の特徴

お金が増えるほどに人生が豊かになる人と、お金があればあるほど人生を狂わせる人にわかれていきます。世界にはお金があり過ぎるばかりに、大切なものを失ってしまった人たちも少なからず実在するのです。お金に振り回される人生ではなく、お金を操れる人生を手に入れなかったら、幸せにはなれません。

一つの分かれ目は、お金に関する根本的な考え方の違いでしょう。「あなたにとってお金とは何でしょうか?」との質問をしてみると、「自由」「人に与えるもの」というポジティブな答えをする人と、「毎月支払うもの」「追われるもの」とネガティブな返答をする人に分かれます。ネガティブな返答はその人の人生観がそのもの。こういった人はいくらあっても幸せになることはないでしょう。