リタイア後の自由時間は10万時間

ここでは「働く」ことを3つの視点から考えてみます。

1.時間
2.心理的欲求
3.幸福度
1.時間

現役の就労時間と、リタイア後の自由時間を簡単な計算で比較してみようと思います。

かりに、大学卒業の22歳から65歳まで正規社員で働くとしましょう。1日の労働時間を8時間、月の就労日数を22日としてみます。残業時間は考慮しない代わりに、年間のお休みも考慮せず、ごくシンプルに計算してみたいと思います。

8時間×22日×12カ月×(65歳-22歳)=90816時間

一方で、リタイア後の自由時間ですが、1日の半分を“自由時間”と仮定し、65歳から90歳までの“自由時間”を計算してみます。

12時間×365日×(90歳-65歳)=109500時間

いかがでしょうか。リタイア後は、時間がたっぷりあります。長生きするほど“自由時間”は増え、現役時代の就労時間を超える可能性も高まります。これだけ時間があれば、ボーッと生きているわけにいかないでしょうから、働く時間をつくるのは、むしろ心身ともに健康的でいいのではないでしょうか。

2.心理的欲求

米国の心理学者マズローが提唱しているものに、「欲求5段階説」があります(図表1)。

マズローは底辺にある欲求から満たされると、より高次の欲求を満たそうとするのが人間であり、人は自己実現に向かって成長し続けるとしました。

図表1にもあるように、第一に私たち人間は「生理的欲求」があります。まず、生きることです(ですから、長生きを否定することは、人としての最低限の欲求を否定しているようにも見え、個人的には人として生まれたことを否定しているようで、とても悲しくなります)。

その次に、身の安全です。単に生きるという生理的欲求が満たされると、飢えなどがない生活の安心、安定を求めます。現代日本では戦争もない平和な国ですから、底辺2つの欲求はほぼ同時に求められる環境かもしれません。その点においては、幸せな国に生まれたといえそうです。

そして、第3段階にあるのが「社会的欲求」と言われる集団から受け入れられたいという欲求です。「所属欲求」とも言われます。要は「居場所」で、人はどこかに所属し、自分の“居場所”を持っていたい動物なのだと思います。

“居場所”が家庭や友人の中にあるケースもあると思いますが、少なくとも働いていれば、どこかに所属していることとなり、人として自然と持つ社会的欲求を満たすことになります。
また、働き方次第では、第4段階の周りから認められたいという「承認欲求」、さらに第5段階の「自己実現欲求」に至っても、満たせることは十分にあるでしょう。

ただ単にお金のために働くのではなく、やりたいことややりがい、社会に貢献するという働き甲斐を追求した働き方を求めることで、収入を得ながら人生をより豊かにしていくことも目指せるのだと思います。