なぜ女性は活躍できないのだろう

そんな時、昔の同期の女性の多くが、結婚などで会計士をやめてしまっていることに気づいた。

会計士というのは、決して簡単に取れるような資格ではない。「本当はやっぱり働き続けたいんだよね」という彼女たちを見て、あんなにがんばったのに、とひとごとながら残念な気持ちになってもいた。

「女性が活躍できないのはなぜだろう」――そんな気持ちを抱えつつ、異業種交流会を重ねていた井口さんだったが、交流を重ねるうち、同じ思いを持つ人たちに出会っていく。

2015年、女性が活躍できる社会を作るための「女子会」ができないかと、創業メンバーで社長になる矢口紀子さんをはじめ、4人が集まった。井口さんは財務に強いため、経営の裏方を任された。

そのうちの2人がドローンに詳しく、社会進出したい女性にドローンを教えていた。それが、「事業になるんじゃないか」と気づき、「ドローンジョプラス」というドローンを教えるコミュニティーを作ることになった。ドローンでの空撮技術を身に付ければフリーで稼いでいく道が広がる。男性が多いこの分野に女性人材を増やしていくことの意義も感じていた。

会社を作るならと、LVMHを退社。つながりがあった実業家の支援を受け、2016年にKanatta(旧AIR)を立ち上げた。

新事業説明会への参加者はたった一人

とはいえ、形になるまでは、そんなに簡単ではなかった。

女性を支援していくためには、その女性を金銭的に支えることが大事だ。そのために、女性の夢に対するクラウドファンディングを始めようと考えた。

クラウドファンディングの名称は、「夢がかなった」と「理想と現実がかなった」という2つの意味を込め、「kanatta」と名付けた。

井口さんの女子会ネットワークに声をかけると、5人がクラウドファンディングプロジェクトへの応募を希望した。5人もいれば何とかなるかな、と高をくくり、説明会を開いてみると、当日参加したのはたったの一人。これは人が集まるのかと冷や汗をかき、そこから起案者を必死で集めた。