女性が絶望する「仕事とワンオペ育児」の両立

最大のネックになっているのは、職場の長時間労働、働き方です。日本の職場では、働き方改革の大号令もむなしく、いまだに職場の長時間労働体質が抜けていません。長時間労働が横行している職場では、女性は「将来、子どもを生んだとき、仕事と家庭の両立ができないだろうな」ということを考えます。

このような長時間労働が横行し、それを見直す雰囲気のない職場で働いていると、女性の就業意欲は下がることがわかっています。女性の配偶者やパートナーも長時間労働が横行している企業で働いているなら、この絶望はさらに深いものになります。万が一、子どもが生まれた場合には、さらに過酷な「仕事とワンオペ育児」の両立を女性が求められるようになるからです。

管理職人材のアンバランスを見て意欲が減退する

さらに、管理職や経営層にすでに昇進している人材が、男性に偏っていることも問題です。私は仕事柄、企業の管理職研修を見たり、自分で担当する機会が多くあります。

まず、管理職研修でいつも思うことは、その参加者のアンバランスです。日本の企業の管理職研修では、女性が3割いることはまずありません。ひどい場合には、100名の管理職がいて、女性が2名程度の企業もあります。いても女性活躍系か総務系、広報系の部署に偏っています。

入社してそういう実態を目の当たりにすると、女性は昇進意欲が失せるのかもしれません。自分が将来、経営層、管理職になるイメージが描けないのです。

今回は女性の価値観からのアプローチで昇進意欲を妨げるものを考えてみました。このように、女性の管理職昇進意欲をそいでいるのは、たいがいは「職場」や「管理職」の問題です。次回は女性の昇進意欲を下げる正体をさらに探っていきましょう。

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中原 淳(なかはら・じゅん)
博士(人間科学)、立教大学経営学部教授

1975年、北海道旭川市生まれ。東京大学教育学部を卒業後、大阪大学大学院人間科学研究科、メディア教育開発センター(現・放送大学)、米国・マサチューセッツ工科大学客員研究員、東京大学講師・准教授などをへて、2018年より現職。「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人材開発・組織開発について研究している。『職場学習論』『経営学習論』(ともに東京大学出版会)、『研修開発入門』(ダイヤモンド社)、『駆け出しマネジャーの成長論』(中公新書ラクレ)、『フィードバック入門』『話し合いの作法』(ともにPHPビジネス新書)など、共編著多数。