低容量ピルで、卵巣の「ムダ疲れ」を予防

子どもは欲しいけれど、今はまだ考えられない。そうした時期にひとつの選択肢として考えたいもの、として月花さんが教えてくれたのが低容量ピルの存在です。

「月経周期に合わせて、女性ホルモンの数値は大きく変動します。それに反応して、卵巣が腫れたり、卵巣上皮が破裂したりして、排卵する。この周期的な腫れや破裂は、卵巣にとっても負担になります。低容量ピルを服用すると、排卵が抑えられ、ホルモンバランスを一定に保つことができます。

子宮内膜症と診断された方には、低容量ピルの服用によって炎症の進行を抑え、内膜症を改善する効果が期待できます。また、そうしたトラブルがない人にとっても、月経前症候群や生理中の不快感、体調不良などを防いだり、肌の調子がよくなったりと、うれしい副効果がいろいろ。卵巣がんや子宮体がんのリスクを下げる、という報告もあります。排卵がないからといって、卵巣機能が落ちたり、萎縮したりすることはありません。産婦人科の20・30代の女医は、おそらく8〜9割は低容量ピルを使っていると思いますよ」

ピルの服用中は絶対禁煙、血栓症のリスクが高まるため、脱水に気をつけるなどの注意点はあるものの、働く女性にとってもメリットが大きいと言えそうです。

「ピルをスタートすると、1日1回、ほぼ同じ時間に薬を服用することになります。保険のピルを内服する場合は、保険処方できるのが3カ月分までなので、3カ月に1回は産婦人科を受診することに。またピルの内服中は1年に1回の子宮頸がん検診をマストにしているクリニックも多いです。こうした習慣を持つことも、自分をケアし、いたわる意識につながるのではないかと思います」

妊活のタイムリミットがうっすら見え始める、30代半ば。焦る必要はないとはいえ、自分の体をきちんと知り、今できることから着手していくことが大切です。プレ妊活は、自分の望むライフプランの実現にむけて、具体的に考えるきっかけにもなるはずです。

文=浦上 藍子 写真=iStock.com

月花 瑶子(げっか・ようこ)
日本産科婦人科学会産婦人科専門医

東京・新宿にある不妊治療専門クリニック杉山産婦人科に勤務。 産婦人科領域で事業展開するヘルスアンドライツのメディカルアドバイザーを務める。 共著書に『やさしく正しい 妊活大事典』(プレジデント社)、 監修メディアに「性をただしく知るメディア Coyoli」がある。