不妊治療も体外受精や顕微授精の高度生殖医療となると、費用は30万~60万円にもなります。少しでも経済的負担を減らしたいもの。そこで、自治体の助成金をもらう方法について詳しく解説します。

※本稿は吉川雄司著、月花瑶子監修『やさしく正しい妊活大事典』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

(登場人物紹介)
せいじ】東京都出身。大学卒業後は大手メーカーに勤務。趣味はキャンプと革靴磨き。友人の紹介で出会った「せいこ」と先日入籍。せいじもせいこも今年で30歳。これから「二人の理想の家庭」を築くために、今後の家族計画を考えはじめたところである。
きょうこ先生(以下先生)】産婦人科医。神奈川県出身。小学校から高校までは女子校育ち。医大卒業後、産婦人科医の道へと進む。日本人の「妊活」の知識レベルの低さを問題視し、義務教育だけでは補えない「妊活知識」を社会に広めようと、『妊活大事典』という本の執筆を開始。

自治体からの助成金を申請できる条件とは

【先生】「高度生殖医療(体外受精・顕微授精)」を受けるとなると、保険適用外なので費用が一気に高くなり、「助成金」を使うという選択肢が出てきます。この助成金について見ていきましょう!

※写真はイメージです(写真=iStock.com/ninitta)

体外受精や顕微授精は「高度生殖医療」というカテゴリになるのですが、高度生殖医療は完全に自由診療です。また、卵胞を育てる目的や採卵、培養、移植、そして着床維持のためのホルモン補充と、ホルモン使用の機会も増え、クリニックでの診療回数も月に4~6回ほどになります。なので、費用も高くなるんですね。

「高度」と名前に付くだけあって、妊娠に繋がるようあらゆる手を尽くします。費用については、体外受精ではだいたい30万~50万円程度のクリニックが多いです。顕微授精となると、40万~60万円程度でしょうか。自由診療なので病院によって費用は異なりますし、採卵後の凍結胚の個数や、投与する薬の量によってかかる費用に幅があります。

【せいじ】それにしても、高いですね……。

【先生】ということで、国は「特定治療支援事業制度」として高度生殖医療を対象とした「助成金」を設けています。ただ、全員が何回でも申請できるわけではありません。まずは申請条件について見ていきましょう(図表1)!

助成金を申請できる条件

東京では所得制限の引き上げも

【先生】一つ目は「所得制限」です。まず、ここで引っかかる人が意外と多くいる印象です。特に東京住まいだとその他の地域よりも物価も高いため給与も高いですよね。そして不妊治療を開始する年齢でいうと30代後半の人も少なくないですが、「36歳、夫婦共働き」の世帯だと、所得制限で決められている730万円を超えている家庭はそれなりにあると思います。ですからそんな状況を考慮してか、東京都は2019年の4月より「905万円未満」と、200万円近く所得制限のハードルを下げました。

【せいじ】たしかに、30代まで働きづめで、そこから妊娠のために治療ってなる頃には、東京だと夫婦共働きで730万円って、少なくはなさそうですよね。

【先生】そうですよね。私の勤務している不妊専門クリニックだと初診に来る年齢が35歳前後の方は多く、年収も他の地域より高いので今までは助成金申請ができないという方が多かった印象です。

【せいじ】そう考えると、今回の所得制限の引き上げはいいことですよね!

【先生】はい! 所得制限のハードルで助成金申請を諦めていた方は多いと思うので……。ただ所得制限について、注意してほしいのは、「730万円」というのは「課税所得額」なので給与明細上の「年収」とは異なることは理解しておいてください。

【せいじ】そうなんですね!

【先生】はい、なので730万円を少し超えていたとしても、一度申請窓口で課税所得額の計算をしてもらう方が良いと思います。頼めば計算してくれます。