若者の投票率向上と票ハラ防止

このやり取りについて今の日本の大学生に感想を聞いてみると、違和感、もしくは嫌悪感を覚えるという意見が大多数でした。若い世代においては、政治家や社会のリーダーが男性でなくてはならないという意識もかなり薄くなっているので、この価値観の問題は、時間とともに解消されていくことでしょう。ここで考えなくてはならないのは、若者の投票率の低さです。今回の参院選は全年代の投票率も48.8%と過半数を割り込む低水準でしたが、中でも10代の投票率は31.3%と極めて低いものでした。政治における昔ながらの価値観を早く払拭するためにも、若者の投票率を上げることには真剣に取り組む必要があります。

ところで、女性の議員を増やすのは、男女を問わず能力のある人々が政治を担えるようにすることによって、この社会を良くしていくためであって、議員になりたいけれどもなれないかわいそうな女性を救うためではありません。その勘違いを正さなければ「お前に投票してやるからお尻を触らせろ」と女性候補者に言い寄ってくるセクハラオヤジによるいわゆる「票ハラスメント」が後を絶つことはないでしょう。

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鈴木 賢志(すずき・けんじ)
明治大学国際日本学部教授・学部長

1992年東京大学法学部卒。英国ウォーリック大学で博士号(PhD)。97年から10年間、ストックホルム商科大学欧州日本研究所勤務。日本と北欧を中心とした比較社会システムを研究する。