「うだつの上がる町並み」を彩る、灯りと風情に癒やされる

続いて巡りたいのは、美濃和紙を使用した灯りの競演に心癒やされる「美濃和紙あかりアート館」。建物は、昭和16年ごろに建てられた趣のある近代木造建築。登録有形文化財に指定されている館内の2階に上がると、目の前に広がるのは和紙をまとったほのかで幻想的な光の空間。毎年秋、「うだつの上がる町並み」のメインストリートで開催される「美濃和紙あかりアート展」に出品された、アート作品がずらりと展示されている。美大生から一般まで老若男女、さまざまな人々がつくり出した作品を一堂に鑑賞できる。

「美濃和紙あかりアート館」

時間/9:00~16:30(4月~9月) 9:00~16:00(10月~3月)
休館日/火曜日・祝日の翌日
入館料/大人200円
TEL/0575-33-3772
岐阜県美濃市本住町1901-3

そして、そのアート展が開催されるという、「うだつが上がらない」の語源でもある、うだつを見ることができる町並みは、あかりアート館から歩いてすぐのところにある。

「うだつが上がらない」とは、なかなか出世できない、なかなか金銭的に恵まれないという意味があるが、なぜそのような言葉が生まれたのかは、この町並みのある部分に隠されている。

「うだつ」とは、民家の両妻に屋根より一段高く設けた小屋根つきの土壁と袖壁のこと。隣家からのもらい火を防ぐ防火機能はもちろん、家の格を誇示する装飾的役割も兼ね備えている。このうだつを造ることを「うだつが上がる」といい、金持ちでなければ造れなかったことが語源となっている。

この町に暮らした昔の人々も、「いつかは自分も“うだつ”を上げる」とがんばったのだろう、見事にうだつの上がった趣のある町並みが保存されている。

その町並みの中でひときわ目を引く、由緒ありそうな町屋が「旧今井家住宅」で、奥の蔵のひとつは美濃史料館となっている。

この旧今井家住宅は、この町で最も古いうだつ軒飾りの形式を残しているそう。江戸末期から昭和16年ごろまで庄屋を勤めてきた和紙問屋の建物だ。江戸中期に建てられ、明治初期に増築されたといわれ、間口よりも奥行きが長い造りは、京都の町屋と同じ。間取りは市内最大規模で、豪商ぶりが見て取れる。見学していると、江戸時代の商家の仕事風景と暮らしぶりが目に浮かんでくる。

中庭が眺められる奥座敷には、月明かりが差し込むように作られた欄間飾りや、月を愛でるための月見台もある。中庭には、「日本の音風景100選」(環境省認定)に認定された水琴窟(すいきんくつ)がある。水滴が落ちるたびに鳴る琴のような涼やかな音色に、主たちが風流をたしなんだ様子が見て取れる。

奥に長い敷地内に点在する蔵には、美濃市の古い歴史や文化、うだつなどの建造物に関する史料の展示、さらに美濃の郷土芸能「にわか」を紹介している。

「旧今井家住宅・美濃史料館」
開館時間/9:00~16:30(4月~9月) 9:00~16:00(10月~3月)
休館日/火曜日(12月~2月 ※3月~11月は無休)・祝日の翌日・12月29日~1月3日
入館料/大人300円
TEL/0575-33-0021
岐阜県美濃市泉町1883
※「美濃和紙の里会館」「美濃和紙あかりアート館」「旧今井家住宅・美濃史料館」の3館を巡る、3館共通券(大人800円)および、「美濃和紙あかりアート館」「旧今井家住宅・美濃史料館」の2館共通券(大人400円)もあり。