なぜ「人並みで十分」なのか
なぜ、人並みの働き方で十分という人が増えているのか。同調査を毎年分析している社会学者の岩間夏樹氏は、昔と今の働くモチベーションの違いを指摘している。
「昔は黙っていても馬車馬のように働いてくれる社員がいましたし、それが当たり前だと思っている経営者もいるかもしれませんが、今の若い人にそれを求めても無理です。高度成長期やそれ以降も物やお金を得たいという欲望が、働くことのモチベーションになっていましたし、豊かになりたいという強烈な動機がありました。物やお金が強い動機づけになっていたのですが、今は若い人の働くモチベーション自体が不安定になっており、物やお金があまりモチベーションにつながりません。この結果を見ると、日本の企業が若い人を活用することに失敗しているのではないかと考えざるを得ません」
労働の対価は言うまでもなく報酬であるが、その報酬を使って何かを買いたい、何かを実現したいという欲求が薄れていると指摘する。そうだとすればがんばって成果を出し、昇進して給与を多く得ることに魅力を感じなくなるのも当然だ。
「若いうちは苦労すべき」という根性論は通用しない
同調査では「若いうちは自ら進んで苦労するぐらいの気持ちがなくてはならないと思いますか。それとも何も好んで苦労することはないと思いますか」という質問もしている。2011年は「進んで苦労すべきだ」が70%で、「好んで苦労することはない」との間に54.3ポイントの開きがあった。だが、その差はどんどん縮まり、今年は「好んで苦労することはない」との回答が37.3%、「進んで苦労すべきだ」が43.2%まで減少している。
その差は5.9ポイント。つまり、自ら進んで苦労して働くほどの魅力を感じていない人が増えているということだ。昭和の時代は「若いときの苦労は買ってでもせよ」と言われたものだ。とくに社会的成功者は「人の二倍も三倍も働け」という教訓を垂れたものだ。だが、今ではその発想や考え方は通用しない。