「ほぼ毎日髪を洗う」は、90年代から
これらの商品の研究開発や、販売促進に携わっている人には、一方的な言い分に聞こえるかもしれません。ただ、かつて「日本女性のヘアケアの歴史」を調べたことのある筆者は、こうした声を「現代女性のヘアケア意識」と受けとめました。
現在のように、女性が「髪をほぼ毎日洗う」(髪洗い頻度の平均「週5~6回」)となったのは1990年代からです(数字はいずれも花王調べ)。ちなみに朝に髪を洗う「朝シャン」の最初のブームは1980年代後半から90年代前半にかけてでした。
今から60年以上前、1955年に発売された「花王フェザーシャンプー」(当時は粉末タイプ)の広告は「髪洗いは5日に1度!」を提唱していました。1970年代でも髪洗い頻度は「週2回」程度。「ほぼ毎日洗う」ようになったのは、消費者の美容意識の高まりとともに、「内風呂の普及」(1970年は50%、1990年代に90%)と関係があるといわれます。
“こだわり消費”で細分化されるヘアケア市場
女性の中には「行きつけの美容室で気に入ったヘアケア商品を使う」人も多いようです。美容室向けブランドも展開し、家庭品では「メリット」(1970年発売)や「エッセンシャル」(1976年発売)などのロングセラーブランドを持つ花王では、ヘアケアに対する消費者意識をこう説明しています。
「最近の消費者は、自分に合ったもの、気に入ったものには惜しまず自己投資する傾向があります。その中で、浴室内で使う『インバスヘアケア市場』は、成分、香りなど、アイテム数やカテゴリーの増加で商品数が多く、消費者は自分に合うものを選ぶのが難しい時代になっています。しかし『こだわりをもって自分にふさわしいものを選びたい』ニーズは高く、ハイプレミアム価格帯は活性化しています」(花王広報部・小川直哉さん)
花王によれば「2018年度インバスヘアケアの市場規模は2000憶円弱で、2019年も横ばいと見込んでいます」とのこと。一方でシャンプーブランドは、他の分野のように、20%を超える突出したブランドはありません。逆にいえば、それだけ消費者の好みが細分化された市場といえます。