指導に、一切の怒りは不要

※写真はイメージです(写真=iStock.com/itakayuki)
「怒る」ことも、時には指導や教育の一環として仕方ないことだと思っている

新野さんによると、まず指導に「怒り」は不要で、これが一番重要なことだと言う。特に「指導しなきゃ」という思い込みや、部下からナメられたらどうしようという不安感、まわりへのパフォーマンスで怒るのは論外。「何があっても絶対に怒らない」くらいの意識でいる方がいいのだとか。

「怒られると、部下の気持ちは問題の解決にではなく、『怒られたくない』『逃げたい』という方向に向きます。結果、『いかに怒られないようにするか』ばかり考えるようになり、仕事にやりがいを感じられなくなってしまいます」と、若手の退職理由を語る岡崎さん。

いかなる時も上司が怒るのを我慢する場合、上司にかなりのストレスが溜まりそうだが、新野さんいわく「我慢をするなら、上司がするべき」とのこと。理由は、部下よりも多く給料をもらっているからだそうだ。

「怒ることは、自分の個人的な感情の発散でしかないということを知ってください」(新野さん)

良かれと思い、「社会人として~べきだよ」という“べき論”を長々と語ることがある

新野さんたちが、退職希望者の上司に連絡をすると、「常識的におかしいだろ」「社会人として~」と30分ほど説教を受けることが、頻繁にあるそう。

「話を聞きながら、退職希望者は、今までこのような“べき論”を押し付けられてきたんだなぁと体感しますね。退職は当たり前に認められているひとつの権利。それがおかしいというのは、ただの押し付けでしかありません」と新野さん。

例えば、顧客対応として「手書きで手紙を書いて、毎年出すべき」や「FAXを使うべき」などの指導。メールの方がずっと効率的なのに「昔からこうだから、そうするべき」というロジックのない“べき論”で押し通すような指導を続けていれば、今時若手は同じように思考停止するのが怖くて退職し、転職してしまうそうだ。

岡崎さんいわく、「上司には今まで蓄積してきた経験やノウハウがあるが、その分固定概念に縛られています。『違う環境から来た新入社員が言っていることの方が正しいかもしれない』と、自分の当たり前を疑う姿勢を身に付けることが大事です」とのこと。

管理職として、部下や後輩のスケジュールは全て把握するように努めている

1日のスケジュールを全て把握した上で、逐一電話をかけて「今何をしてる?」などと確認するマイクロマネジメントも、若手の大きな負担となり、退職理由の1つになっていると、新野さんと岡崎さんは語る。上司に「信用されていない」と感じることで、部下がその上司の元で働く意欲が失われてしまうのだそうだ。

新野さんいわく「就職は、どの上司に当たるかの人運」とのこと。部下にとって、ハズレの上司になってはいないかどうか、自分を客観視してみる必要がありそうだ。