おじさんが組織を牛耳る弊害
日本人が本当に集団主義かどうかは議論の余地があるところですが、多くの日本人は世界から自分たちが集団主義であると見られていると思っています。そのため、日本の組織の中では個人を犠牲にすることもいとわない文化が肯定されやすくなっています。つまり、日本社会ではおじさんたちが組織を牛耳っている弊害がまだ色濃く残っています。
その背景には、おじさんたちが仕事にどっぷりとつかってしまっている状況があります。自分が生きている世界のほとんどが職場だと、それがすべてだと思ってしまいます。世界の中心が職場なので人間関係も濃密になってきます。そんな状況だとストレスを抱えやすいし、ちょっとしたことでも感情が爆発してしまいがちです。
ハラスメントを減らすためには、仕事以外にも自分の世界を持つことが必要なのです。それは家庭でも趣味でもいいと思います。仕事以外の世界があれば、たとえ職場で嫌なことがあっても、それがすべてではありませんから相対的に嫌なことのインパクトが弱められて、怒りが爆発するところまでは至りません。
これは何もおじさん、男性に限りません。女性であっても仕事だけが生きがいになってしまえば、そこでうまくいかなかった場合、気持ちが煮詰まってしまったり、感情が抑えられなくなったりして、同僚や部下に対してハラスメントを犯してしまうこともあり得ます。
組織の論理で個をつぶしてはいけない
かつてはパワハラ、セクハラのオンパレードだったスポーツの世界も今急速に変わり始めています。監督やコーチがパワハラと受け止められるような言動で指導しないほうが、若い才能が伸びている気がします。
たとえばテニスの大坂なおみさんや卓球の伊藤美誠さんなど、若手でどんどんと活躍するアスリートが出てきています。アスリートの成長にはパワハラは不要、さらにパワハラは害であると認識され、ますますスポーツ界からパワハラが減っていく潮流があるのだと思います。そう考えると、いずれ企業社会からもパワハラがなくなっていくのではないでしょうか。組織の論理で個をつぶしてしまっては、企業の寿命を縮めるだけです。
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