会社員として海外赴任するとどうなる?

梢さんは会社を辞めて移住するケースだが、会社員として海外赴任する、という場合はどうなるだろう。

厚生年金には国内に居住しているか否かは問われず、会社員(第2号被保険者)が海外赴任する場合は、厚生年金に加入したまま、となる。保険料も払い続ける必要があり、「日本を離れていたから将来の年金が少ない」ということは避けられる。

ちなみに、赴任先で社会保障制度に加入する義務がある場合は、日本の年金と赴任先の年金に二重で加入することになる。そこで、日本はアメリカやドイツ、イギリス、フランスなどと「社会保障協定」を結んでおり、それらの国に赴任する場合は、5年以内なら日本のみで加入、5年超では相手国のみで加入する、ということになっている。

なお、会社を辞めて、日本の住まいはそのまま、住民票も移さずに海外に短期留学する、といった場合には、日本の公的年金に継続して加入し、国民年金の保険料を払い続ける。保険料を未納すると、障害を負った場合の「障害年金」が受けられないといったリスクがあるので、要注意である。

フリーランスや自営は自助努力必要

以上のように、年金が最も少ないのは、フリーランスや自営である。梢さんのケースでも年額約108万円、月額約9万円で、生活費にはかなりの不足がある。年金が少ない分、自身で年金を準備する「自分年金」がより多く必要だ。

年金づくりにはiDeCo(個人型確定拠出年金)があり、拠出額(掛け金)が全額所得控除されることで所得税や住民税が軽減されたり、運用益に非課税になったりするメリットを得ながら年金づくりができる。

iDeCoは会社員でも利用できるが、拠出額の上限はフリーランスや自営が最も多く、年間81万6000円まで拠出できる。国民年金の保険料は厚生年金の保険料より少ないので、頑張ってiDeCoを利用する(無理がなければ上限額まで)のが得策といえる。梢さんが41歳から60歳まで上限額を拠出すれば、元本だけでも1632万円だ。

キャリアプランを考える際は、年金のことも意識しよう。

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