留学を経て平均年収600万円では月15万円弱

では、梢さんが海外に長期留学すると年金はどうなるだろう。

梢さんが描くのは、現在勤めている会社を退職してアメリカの大学に入学し、数年間、しっかりと勉強すること。その後、帰国して、外資系企業に再就職したいと思っている。

会社員からフリーランスや自営になると、厚生年金(第2号被保険者)から国民年金(第1号被保険者)に切り替わるが、梢さんは退職してすぐに出国するため、話が少しややこしくなる。

まずおさえておきたいのは、第1号被保険者は国内に住所があること(住民票が日本にあること)が加入の要件になっている、ということ。つまり梢さんは第1号被保険者として国民年金に加入できず、「カラ期間」という扱いになるのだ。

「カラ期間」は年金を受給するための受給資格(10年以上加入していないと老後の年金は受給できない)にはカウントされるが、カラ期間中は年金保険料を払わないため、年金額には反映されない。つまり、移住している期間の分、将来受け取る年金が少なくなる、ということになる。

梢さんが35歳で会社を退職して、アメリカで5年間学び、帰国したとしよう。

梢さんの年金加入期間は、20歳から21歳まで国民年金、22歳から35歳まで厚生年金、36歳から40歳までカラ期間、41歳~60歳まで厚生年金、となる。

会社員時代の平均年収が600万円とすると、国民年金は68万2600円、厚生年金は108万5200円、合計で176万7800円となる。月額では14万7000円だ。

ずっと会社員だった場合に比べると、年額6万2000円のダウンである。カラ期間が5年あることが年金が減る要因だが、平均年収が100万円上がるという想定で考えると、5年のカラ期間の影響はかなり抑えられる。キャリアアップした成果、というわけだ。

ちなみに、海外に居住している間も、「任意加入」という制度を利用して保険料を払い続けることもでき、そうすることで年金の受給額を増やすこともできる。経済的に余裕があれば、その選択肢も検討して欲しい。公的年金は「一生涯受け取れる終身型」のため、長生き時代には公的年金を増やすことはとても大切だ。