規模の経済と範囲の経済

皆さんは、「規模の経済」と「範囲の経済」をご存じでしょうか。

規模の経済は、モノを多く作れば作るほど、1個あたりにかかる「生産コスト(単位あたりの費用)」が下がり、効率がアップすること。別名「スケールメリット」とも言います。

家庭でもそうですよね。例えば、「1人分」のカレーを手作りするとき。引っ越したばかりで手元に何もなければ……、鍋や包丁、まな板を買い、新品のルーや調味料、香辛料を揃え、と手間も費用もかかります。

ですが「5人分」のカレーを作るとなれば……、じゃがいもや人参など、食材は多く必要ですが、初期費用や光熱費を含めたその他の費用は、たぶん1人分とほとんど同じ。

となると、1人前あたりにかかる「生産コスト」は、規模が大きい5人分のほうが圧倒的に低くなります。この場合、マーケティングや経営学では「規模の経済性が働いた」と言います。

他方の「範囲の経済」も、同じくカレーを例に考えてみましょう。

引っ越し初日、あなたはゼロから調理するために、新品の調理器具や香辛料などを買い揃えました。もしこれらが「カレー」を作る時だけにしか使えないとなれば……、「毎日がカレー」など、よほどカレー大好き家族でない限り、登場回数はせいぜい週に1~2回程度ですよね。

となると、調味料は「賞味期限内」に使い切れないかもしれない。収納スペースも、「カレーだけのために、こんなに大きな鍋をしまっておくの?」とムダに感じるでしょう。また「せっかく、この鍋の使い勝手に慣れたのに」と、あなたが培った「鍋スキル」を、カレーの時にしか活かせないことを「もったいない」と思うのでは?

日本で初めて飲むヨーグルトを開発した会社

でももし、同じ調味料や鍋スキル、あるいは鍋本体が、カレー以外の別メニュー、例えばシチューやトマト煮込みなどでも活躍できるとしたら……、材料やスキルの登場回数は増え、ムダに感じるスペースや使い切れずに捨てる可能性も減るはずです。

こうした場合に、「範囲の経済が働いた」と言えます。すなわち、範囲の経済とは、一つの企業(家庭)が、複数の異なる事業や別分野の商品(メニュー)を行なったり作ったりすることで、一事業あたりのコストを削減できるという概念。おもに、事業の「多角化」などの際に、用いられる考え方です。

先の日清食品グループの例も、広い意味で「範囲の経済」が働いた一例と言えるでしょう。

というのも、同グループ企業の一つである「日清ヨーク」は、日本で初めて飲むヨーグルトを開発した、乳酸菌の老舗だから。つまり、肌にうれしい「ヒアルモイスト乳酸菌」を研究・発見できるだけの下地が、既に50年も前から、日清食品グループにあったのです。