人口減で事業の多角化は必須

「ヒアルモイスト乳酸菌」の研究を支えたのは、東京・八王子にある日清食品グループの研究拠点「the WAVE」。ここではインスタントラーメンやチルド、冷凍食品などの商品開発と並行して、健康科学の研究も行なわれています。

また、「ヒアルモイスト乳酸菌」は、同グループが長年大切に蓄積してきた「微生物ライブラリー」の中から発見した、とのこと。今回、そのライブラリーがあったからこそ、「美容ドリンク」という新たな分野に進出できたと言えるでしょう。

自社が持つ技術や素材を活用して、別の事業や分野を伸ばす……、マーケティングや経営学の分野で、こうした「範囲の経済」の好例としてよく取り上げられるのは、富士フイルムホールディングスの化粧品ブランド「アスタリフト」です。

こちらも発売された06年当時、「なぜ富士フイルムが化粧品を出すの?」との疑問が、多くの消費者から寄せられたと言います。ですがここには、同社が長年かけて培った3つの技術や原料が活かされていました。

1つ目は、フイルムの主原料でもあるコラーゲン。2つ目が、写真の色あせや肌の老化を防ぐ「抗酸化技術」。そして3つ目が、写真の画質向上や化粧品成分の肌浸透に役立つ「ナノテクノロジー」です。逆にこの3つが備わっていなければ、富士フイルムは化粧品分野に進出することはなかったと思われます。

前回、「忙しい人ほど“借り放題”の虜になる理由」でもお伝えした通り、日本は人口減少が顕著です。多くを作って売ることで効率を上げる「規模の経済」は、今後あまり期待できません。

だからこそ令和の時代は、事業の多角化によって効率を上げる「範囲の経済」を狙う企業が、今以上に増えていくはず。

今後も「なぜこの企業が、この商品を?」と驚くような新商品が、続々と登場するでしょう。そのとき、ぜひ「範囲の経済」の視点がどこかに活かされていないか、注目してみてください。きっと何かの形で、その企業が長年培ってきた技術や施設、ものの考え方が活かされているはずですよ。