上野千鶴子さんによる東大入学式での祝辞が、性差や年齢を超えて大きな反響を呼んでいる。近著『上野千鶴子のサバイバル語録』(文春文庫)では、今を生きる女性たちへのメッセージが140も登場。その中から7つを厳選した。上野さんは言う。「わたしが書いた本は、わたし自身が生き延びるための、悪戦苦闘の産物でした」と。だからこそ、どの言葉も強く、私たちの胸を打つ――。

※本稿は『上野千鶴子のサバイバル語録』(文春文庫)の一部を再編集したものです。

女でよかったな、と思ってもらいたい

わたしが書いた本は、わたし自身が生き延びるための、悪戦苦闘の産物でした。

そのなかから、いまを生きる女たちに、もしかしたら役に立つかもしれないことばを厳選しました。40年間にわたって書いたり発言したりしたことから、テーマ別に合計140の文章を集めました。

けんかに強いといわれてきました。好きでけんかに強くなったわけではありません。

打たれ強いともいわれてきました。生まれたときから打たれづよかったわけではありません。

怖い女、といわれてきました。敵にまわしたら怖いかもしれませんが、味方にはやさしいといわれています。

いずれも必要に迫られて、生き延びるために身につけたスキルでした。

60年以上もにんげんをやってくると、たとえ世の中は変えられなくても、自分の身の廻り5メートルの範囲ぐらい、気持ちのよい人間関係をつくりだすことができるようになりました。ひとりで生きてきた不安も、ひとつひとつ解決することができるようになりました。何人か愛しあったひともいますし、心から尊敬できるひとたちとも出会いました。むかつくこともキモチわるいこともいまだにたくさんあるけれど、それ以上に生きてきてよかったな、にんげんっていいな、よくやってるな、と思えるいまがあります。そしていのちが尽きるまで、ちゃんと生きおおせよう、と思います。

あなたにもそう思ってもらいたい。生き延びて、人生の終わりに、生きてきてよかったな、と思ってもらいたい、と思います。そして女であることを愛してもらいたい、女でよかったな、と思ってもらいたい。

そんなあなたに、この『サバイバル語録』を贈ります。  上野千鶴子

(『上野千鶴子のサバイバル語録』(文春文庫)「はじめに」より)