ワークライフバランスのためにドイツに転職したい

Gくん:僕、実は将来の転職を視野に入れて就職をしました。ワークライフバランスを最も重視して就活をしていましたが、日本の企業ってその環境がまだまだ整ってないんです。だから、今の会社で経験を積んで、いずれはワークライフバランスを重視した海外の企業に転職します。

原田:Gくんの会社は、1回目の記事「イマドキ新卒は、高給より定時退社を選ぶ」でも話してくれたように、基本的には定時で帰れて、遅くても7時には仕事が終わるんだよね。僕からすると、十分にワークライフバランスがとれているように思えるけど、それでもまだ足りないんだ? それにしても、キャリアアップを目的とした転職を目指すのではなく、ワークライフバランスが得られる会社に転職することを目的に第一就職先を決めるって、確かに昔ではあまりなかった選択かもしれないなあ。でも、まあ、現段階では最良の選択ができたわけだね。

Gくん:僕は今、恋人がいるんですが、恋人ともワークライフバランスについての話をよくします。

原田:恋人同士でワークライフバランスのピロートーク(笑)。今っぽい!

Gくん:色んな国の企業情報を二人で見て、今のところドイツ企業が最もワークライフバランスが整っていそうだと考えています。僕は、どんなに楽しい仕事に巡り合ったとしても、プライベートのほうが絶対に大事です。会社の飲み会があってもできれば飲まずに帰りたいですし……。日本企業は「残業をして時間をかければ良いものができる」みたいな古い考え方を持っているところが多いと思うのですが、それよりも効率的に動いたほうがよくないですか?

やりがいのある仕事を振ってもダメ

原田:ワークライフバランスを求めてドイツに行きたい子が出てきたんだ(笑)。いわゆる「若者の海外離れ」が、ワークライフバランスという概念によってなくなるかもしれないね(笑)。

でも確かに、僕は世界中で若者研究をしているけれど、君のような考え方のほうがグローバルスタンダードに近い。日本のバブル世代や団塊ジュニア世代の上司は、自分たち世代と今の若手社員の労働観をただ時系列で比較して若者はダメになったと嘆くのではなく、グローバル視点を取り入れていかないとダメだね。

でないと、今の超売り手市場の若者たちを採用したり、彼らの転職を防止したりもできないかもしれないね。これから日本にもっともっと移民が増えていくだろうし、上司は日本の若者を見ても、移民の若者を見ても、よりグローバルな視点が必要になってくるでしょう。

ちなみに、先程から、想定以上に「出世したい」と言う子が多くてびっくりしているんだけど、定量データで見ても「社長になりたい」というより「部長・課長程度にはなりたい」という考えを持つ若者が増えているようです。

出世については、日本生産性本部の調査があります。今の70代ぐらいの団塊世代は、社長になりたいと答える人が新入社員の時点で多かった。それより下の世代になると、社長願望はどんどん減っていって、団塊ジュニアと呼ばれる40代ぐらいからは、専門職になりたいという人が新入社員の時に増えた。彼らは就職氷河期を経験しているから、会社が潰れても生きていけるスキルを身に付けたかったんだと思います。僕が20年近く若者研究という専門職を続けているのも、まさに団塊ジュニア群の象徴かもしれない。

そこからまた、今の30代前後になると専門職になりたいと回答する新入社員の数値はどんどん下がっていって、管理職になりたいと回答する人が増えていった。社長にはなりたくないけど、課長にはなりたい。団塊世代は漫画『課長 島耕作』のように課長がスタートラインでしたが、今では課長がゴールになっています。

「ほどほどがいい」「課長がいい」理由

原田:課長になりたいって若者が増えているんだけど、実際は中間管理職が一番つらいという説があります。理由は、上にも下にも気を遣わないといけないから。でも、今の若者からすると、中間管理職の悲哀をまだ現実的に想像できないため、上とも下ともバランスよく付き合えて、社長ほど責任が重くないという程よいポジションに見えている。だから、課長になりたいってことなんだと思います。

さて次回は、理想の上司について皆さんに聞いていこうと思います。

構成=梶塚美帆