ワークライフバランスを最重要視する男子

Gくん:僕は、自分のやりたいことが全然ありませんでした。だから、私生活を豊かにするために働こうと思って、ワークライフバランスを最重視して就職先を決めました。給与の高いところもありましたが、それよりも早く帰れるほうがいい。プライベートを充実させたいんです。

原田:また出ましたね、ワークライフバランス(笑)。もちろん、本来、それが人間として正しい考えだと僕も思うのだけど、ガツガツしていた僕ら団塊ジュニア世代の管理職をやっている人間と話すと、「仕事が楽しかったら、徹夜してでもその仕事をしたくなるはずだ」なんて未だに言うものね。「いや、どんなに楽しい仕事でも、できれば定時に帰りたいというのが今の若者のマジョリティの感覚なんだよ。どんなに楽しい仕事や職場環境を提供してあげても、家でNetflixやabemaTVを見ている時間には絶対に勝てない時代なんだよ」っていくら言っても彼らには絶対に伝わらない。

君たちが会社に入ってそういう発言をすると、きっと「ゆとりモンスター」と捉えられてしまうかもしれないから注意した方がいいかもしれないね。本来なら、会社は若い社員の本音を知るべきで、その上でどういう組織にしていくかを考えていくことが経営陣や管理職に求められているはずなんだけども。

で、君の考えは、人生の豊かさはお金ではないということだね。

Gくん:はい、交友関係などのほうが大事だと思っています。

原田:就職の決め手は何?

Gくん:面接を受けた後って、普通は就活生はみんな無言で別れるんです。でも、今の会社は就活生同士で話す機会が多かった。私生活の話が出ることもあって、その雰囲気がいいなと思って決めました。それから、面接の時なんかは、面接官に突っ込んだ質問をしていました。「遅くても7時には帰れるよ」って言われて、「本当っすかー?」みたいな(笑)。「社内恋愛ってありますか?」なんて聞いてもきちんと答えてくれて、働きやすそうだと思いました。

原田:社員が7時に帰れることを公言してくれたことと、ノリの良い若々しい会話が入社の決め手……。確かにそういうものが若者に求められる時代になってきてはいるが……。

Aさん:ワークライフバランスを重視している子は周りに本当に多いです。少しも残業したくないし、絶対に定時で上がりたい。あとは、「仕事=自己実現」っていう考え方って、もう完全に過去のモノになっていると思います。

面接時にトイレや社員の服装をチェックする理由

原田:就活で企業を訪れたときは、社内のどんなところを特に見てた?

Gくん:オフィスが綺麗かどうかを見ていました。汚いとモチベーション上がりませんから。あと、自宅でMacを使っていてそれに慣れているので、Windows一択だとイヤだなと思っていました。どっちがいいかを選ばせてほしい。

原田:確かに、特に都心の高学歴の学生はマック比率が高くなっているから、受かった会社がウィンドウズを使用しているという理由で内定を蹴った、という話もちょこちょこ聞くようにはなった。

Aさん:私はトイレをよく見ていました。汚いところはイヤなので……。それから、社食やカフェがあるところだとモチベーションが上がります。

原田:僕の経験からも、確かにトイレはその企業の「民度」を測る指標になると思います。トイレのきれいな国は民度が高いし、トイレが汚い国は先進国でも民度が低く感じてしまう。会社も同じで、トイレのきれいさで企業の民度は計れると思う。

ですが、学生さんはトイレで「民度」を計ろうとしているのではなく、きっと全体的に「オシャレ」なオフィスを求めるようになっている、ということなんだろうね。

インスタ世代の君たちからすると、普段からきれいなモノに触れて生きてきているから、Gくんのように男子でさえ、「オシャレ度」を求めるようになってきているんだろうね。

僕のような昭和男性は、もちろんオフィスのきれいさはモチベーションアップの一つにはなるけれど、会社選びの基準は完全に「側より中身」だった。でも、今は「中身より側」になっている面もあるのかもしれないね。

日本は歴史の長い古い企業が世界一多い国だから、中身のある会社は他国と比べて多いと思う。だけど、オフィスやトイレで就活生を魅了する作りにしないと、人材採用ができない時代になりつつあるかもしれないね。

Dくん:僕は働いている皆さんの服装を見ていました。ダボっとした黒いスーツに大きな鞄を持っているとか、身なりを気にしていない人が多かったので、変わって欲しいなと思いました。新入社員でもオシャレなスーツを着たいですから。

原田:これも同じ。インスタ世代からすると、多くのおじさんサラリーマンの身なりはきっとひどいと映るんだろうね。これでも、昭和に比べたら今のおじさんはきれいにはなりつつあるんだけど、君らからするとまだ足りないと感じる企業が多いんだろうね。各企業がスタイリストさんを雇って、おじさん社員に服装の研修をした方が、就活生の心をつかめるかもしれないね。

僕自身、自由な会社で育ったので、ほとんどスーツは着ず、全く格好は気にせず、ずっとTシャツとジーンズで生活してきた。けれど、5年前に日本テレビ「ZIP!」のレギュラーが決まり、スタイリストさんに服装についてあれこれレクチャーを受ける機会をいただき、メイクさんにもお肌の手入れの仕方のレクチャーをしていただくようになり、今では大分意識改革されたように思う。

こんな僕のような体験をするおじさんを日本企業は増やしていかないと、若者の心をつかめないのかもしれないね。

Gくん:就活中のリクルートスーツもイヤですよね。内定式も全員白シャツでしたけど、僕は柄物のシャツで行きました。

「やりたいこと」より雰囲気とワークライフバランス

原田:昔は就職先を決める基準は「自分のやりたい事かどうか」という軸が多かったように思います。でも最近は、雰囲気・ワークライフバランス・社会貢献度・社員の気さくさ・オフィスやトイレのオシャレ度・社員の服装など、選ぶ軸が多様化しているようです。

それから、今の学生の特徴としてよく言われるのが、安定志向がとても強いこと。「失われた20年」の間に公務員志向が非常に高まりました。

ただ、ここ数年は公務員を選ぶ人が減っているそうです。理由は、企業の採用状況がものすごく良いから、前提としてその企業が安定していることは重要だけど、その上で少しでも給料の良いところという意味で「大企業志向」が非常に高くなってきていると言われています。今日いる皆さんもまさに首都圏の良い大学を出て、大企業へ就職を決めた人たちですね。

また、ベンチャー志向の子や起業志向の子も大幅に減ってきていると言われています。
今の学生さんたちが全体的に保守的になってきていることは間違いないと思います。

昭和・平成までだったら「大企業に入っておけば大丈夫」という神話がまだギリギリ成立していたと思いますが、次の元号ではさすがにそうはいかないと個人的には思っています。

次の時代で日本の大企業がどう変化するか、そして、大企業を選択をした皆さんもどう変化するか、個人的に大変楽しみにしています。

さて次回は、出世や転職について聞いていこうと思います。

構成=梶塚美帆