熱すぎるのもダメ、声が小さいのもダメ

Eさん:私は、3年生の5月からじっくりと就活をはじめました。最初は色々な合同説明会に足を運んでいましたが、なかなかピンとくる会社がなかったんです。説明している人の声が小さくて聞き取りづらいだけで「この会社、ちょっとナシかな」って思ったこともあって……。

原田:大声の人が好きなの?(笑)

Eさん:違いますよ(笑)。聞いている就活生への配慮がないと感じました。本当に入って欲しいなら、もっと聞いている人に届く声で話すべきかと。そんな風に、減点法で企業を見ているうちに、「私は何のために働くんだろう」って途中から思い始めて。

原田:2012年以降、企業の業績が回復してきたり、団塊世代の大量退職によって人手不足に陥る企業が増えたこともあり、企業が採用数をかなり増やし始めた。特にこの数年は「超売り手市場」になっている。だから、学生側は強気で、声が小さいという理由だけで(笑)、企業を蹴るようになっている。熱すぎるのもダメ、声が小さいのもダメ……。企業の人事は本当に大変だね。

で、その就活中に迷走から抜け出したきっかけはあったの?

Eさん:ある時、社会貢献度ランキングを調べてみたら、上位に今の会社がありました。

原田:今の学生は「社会貢献」に興味がある人が増えていると言われるけど、やや極端に言うと、「給料よりも社会貢献のほうが重要」という考えの学生が増えてきているのかもしれないね。日本の企業ももっとCSRの取り組みを戦略的に行い、戦略的に学生に対してPRをしないといけないね。CSRの取り組みって「砂漠に木を植えました」的な、それはそれで本当に大切なことではあるんだけど、一見ベタで他社と同じと思われてしまう施策が本当に多いもんね。さらに、そのPRも相当下手で、せっかくお金をかけてやっているのに、全く知られていないことが多い。

Eさん:。就職先を決めた理由は、社会貢献を積極的にしている会社である点と、社員さんの雰囲気が良くて、柔らかくて大らかだったこと。先輩たちだけでなく、一緒に面接を受けている人も自分と合うと感じたし、「こういう人たちと一緒に働きたい」と思いました。

原田:やっぱり最終的には「雰囲気」が決め手なんだね。企業の「雰囲気」は一朝一夕に作れるものじゃないし、PRの仕方も難しいから、「企業の雰囲気作りとその雰囲気を伝える広告作り」も今後の広告会社の使命になっていくかもしれないね。

海外で活躍できるかどうかも大事

Eさん:また、かなり海外進出をしている企業であることも、惹かれた理由の一つです。私は小さい頃、親の仕事で香港やマレーシアに住んでいた経験があるのですが、そこで貧しい人たちを見て、彼らの力になりたいという気持ちがずっとありました。今の会社は発展途上国などへの進出にも注力していて、長期的に考えて社会全体が良くなる事業展開をしていると思えたんです。

Fさん:私も実は、海外に関われる仕事ができるかどうかを重視していて、社会貢献度が高くて誇りが持てることをしたいと考えていました。大学時代はフランスへ留学していたのですが、ある時、田舎町の電車の窓から、就職先の会社が造っている機械を見たことがあったんです。日本の企業が海外で活躍しているのを見て嬉しく思い、印象に残っていました。

原田:若者全体では「海外離れ」していると言われるけど、企業が採用したいと思う上澄みの学生たちは、もちろん全員ではないけど、帰国子女や留学経験がある子も多い。これだけアップルやグーグルやアマゾンなどと日常的に接して生きてきた君たちからすると、国内だけで食っていこうとしている企業って、昔で言うところの小さな商店街だけで食っていこうとしている店舗のように感じてしまうのかもしれないね。

でもさ、日本の企業の中で最もグローバル化が進んでいる一つである自動車メーカーは考えなかった? 東南アジア行ったって、中東行ったって、アフリカ行ったって、日本車は本当に世界中で多く見られるでしょう?

Fさん:全く考えなかったですね。人々の生活や命に直結する機械をつくっているところに惹かれて、今の会社に決めました。

原田:交通手段がなければ人は生活できないし、生きていけない地域もたくさんあるから、車だって人の生活や命に間違いなく直結しているけどね(笑)。でも、君たちには車会社はそう映っていないんだろうね。エコカーが出てもなお、排気ガスを出す環境に悪いモノ、というイメージなんだろうか。車会社も社会貢献訴求を若者たちにもっとやっていく必要がありそう。でないと、日本の重要産業である車業界に優秀な人材が行かなくなってしまう可能性がある。