センシュアルの具体的な例をあげてみると、たとえば会社で、意見の対立があったとします。彼女たちは男性相手に派手な議論を展開します。そして絶対引かない。でも議論が終わった後は、さっぱりとして引きずりません。「さっきは強く言いすぎたわ。ごめんなさい」と優しくフォロー。あんなに怒っていたのにウインクもしたりして(笑)。人間はギャップに引かれがちですが、これには、男性は翻弄(ほんろう)されますよね。まるで、知性あるしたたかな猫科の動物のようです。
何歳になろうが美しくあること、女性に生まれたからには、その特権を思いきり享受しようと、いい意味での“貪欲”さもあります。だから仕事も恋愛も結婚も出産も諦めません。現在の出生率は2.0に近く、日本の約1.5倍。フランス人は“冒険家”の気質があって、リスクをあえて好む民族。子どもを産まないほうが楽かもしれないけれど、子育ての苦労=リスクだっていといません。
休日は子どもをあずけて、夫とデート
といっても、フランスの場合は公的な補助があるので、子育てや学費にお金がかからない。家事は当然夫やパートナーも負担し、家計も折半。休日は子どもをあずけて夫婦で遊びに出かけるのが普通なので、日本のような“ワンオペ育児”にならない。
また、今就いている仕事にやりがいがない、待遇が悪い、と思えば次を探して、よりいい仕事が見つかればさっさと転職します。実際に一流企業の社長は、ぐるぐる変わります。A社のトップが次はB社をやって、B社のトップが次はC社をやっている。これはエグゼクティブクラスの話なので、一般のキャリア女性と簡単に比較できませんが。
転職もそうならパートナーや夫との関係性も流動的。かなり年齢を重ねたマダムであっても、相手との愛が終われば別れて次の人を見つけて付き合います。見習いたいのは、自分が男に選ばれるのではなく男を選ぶ側にもなれるということ。イニシアチブを取る女性は、実にあっぱれ。
このように人生を謳歌(おうか)しているかのようなフランス女性ですが、それはあくまで見えている部分。本質的な部分で差別は残り、給与格差、セクハラ等と女性たちはまだ戦っています。それでも完全に近い平等社会と私たちの目に映るのならば、実は巧妙な社会戦略かもしれません(笑)。成熟した手ごわいフランス文明の側面について、これを機会に興味を持ってみてください。
皮膚科医・作家
東京女子医科大学卒業。病院勤務を経て渡仏。大学病院等で抗老化医学などを学ぶ。現在は、ASEAN、フランス、日本をベースに美と健康、生活スタイル等の情報を発信。近著に『結婚という呪いから逃げられる生き方』(ワニブックス)。
構成=東野りか イラスト=永宮陽子