何故これをするのか? 何がしたいのか? 問い続けること!
「何故これを自分がする必要があるのか? 何をしていきたいのか? 何故? を相手にたくさん聞いてくださいね」。他人から質問を受けながら進めることで、新たな発見があると、廣瀬さんから棚卸しのコツが話された。
受講生たちは引き続き、「3つの出来事の掘り下げから見えてくるあなたのビジョンは?」「あなたにしか提供できない価値って?」と、交互にテーマに沿って話すことで、自己の棚卸しを深めていく。
「じゃあそこまで。今ペアの人に話したことを踏まえ、自分のプロフィールをアップデートしてみてください。経験や事実に基づいたプロフィールには説得力が生まれ、必要な縁を繋いでくれるようになりますよ」。最後に完成したプロフィール文を、再度ペアの相手と交換し、お互いに赤入れをし合う時間が設けられた。
「あなたの魅力は、こっちじゃない?」どのペアも、お互いに相手のことを親身に思いやりながら意見を述べ合う。議論は尽きないまま、第3回目の講義が終了した。
最終講義は受講生の発表会! 継続的なアウトプットで、より良いアウトプットを生む
数日後、最終講義で行われる受講生の発表会を見るために、再度自由大学を訪れた。始業より少し前にドアを開けると、発表会前にもかかわらず、みんなにこやかな表情で雑談をしている。
発表会が始まると、個性的でユニークな企画と手の込んだプレゼン資料が、次々に披露されていく。前回、グリーンスムージーのプレ講義を行った女性は、発表会でも、家で作ってきたというスムージーを配った。
みんなが一口飲んだあと「さて、何が入っているでしょうか?」と当てっこゲーム。「りんご!」「グレープフルーツ!」「柚子?」「わかった、伊予柑!」「正解~!」。前回のフィードバックを踏まえ、講義内容が修正されていた。
資料の中に記載されたプロフィールを読むと「静岡の農家で育ったことで、幼少期から“自然の味をそのまま頂くことのおいしさ”を日常で体感し、育つ」と書かれている。今後開きたい教室案は「地域野菜を使ったグリーンスムージーWS(ワークショップ)イベント」だそうだ。バックボーンとやりたいことが重なっていることから、説得力と本気の思いが伝わってきて、心から応援したくなった。
他の発表も、紙芝居で行ったり、自らの企画する学び場を紹介する架空の新聞記事を作成してきて読み上げたり、それぞれに工夫がこらされている。取り組みが拡散されやすいように、造語を作って、興味深い教室名を発表した生徒もいた。しかも発表された教室案のうち2つは、既に受講生間で食材や場所などのリソースを出し合い、近日開催されることが確定しているというので、驚かされた。
完成度の高い発表内容に私は、ひたすら感心していたが、廣瀬さんからは、「数字や実績を載せましょうか。これだと多分、企画が通らず実現しない」など、最後まで妥協のない駄目出しが行われた。発表者もそれぞれに真剣にメモを取り続け、こうして全6回の講義が終了した。
「全てのワークショップが高い完成度でした。何故そうなったかというと、みんなが他人の企画に感想や意見を言い合ったからです。仲間の可能性におせっかいを焼く練習をしていると、自分の可能性にも気づきやすくなりますから、これからも、誰かのためのアウトプットを継続してください。継続の中で重ねる試行錯誤や出会う人たちは一生の財産になり、この先の自分の生き方をより望ましい方向へと導いてくれますよ」
最後に話された廣瀬さんの言葉には強い説得力があった。
前編で受講した「自分の本を作る方法」と、今回の「小さな教室をひらく」を通して学んだのは「アウトプットの大切さ」だった。それは本づくりや、イベントや教室を企画する時だけでなく、職場で開かれる会議や、SNSを通じた発信など、日々のコミュニケーションのどの場面でも生かせる学びだった。発信には勇気もいるが、発信を恥ずかしいと感じるうちは、自分のための発信しか出来ていない証拠だろう。
自分の弱さや失敗を、誰かの背中を押すためにあえて話してみたり、誰かの意見に「私はこう思います」と積極的に意見を出してみたり。日々地道に、誰かのためのアウトプットを積み重ねること。それこそが、仕事やプライベートで「誰かの役に立ちたい」想いを叶え、自分自身の向上にもつながっていくのだろう。今回受講した二人の教授の本気の講義内容から、つくづくそう実感させられたのだった。