ある程度、職場の環境には慣れた頃「仕事とは別に、もっと学びたい!」「自分の経験を生かして、誰かの役に立つことがしたい」。そんな想いを抱えたまま働いている女性は決して少なくないだろう。そんな女性たちの向上心溢れる想いを具体化するための、実践的なノウハウを教えてくれる場がある。それが、大人の学び舎「自由大学」だ。

向上心溢れる女性の学び舎「自由大学」

欧米で始まったデザイン家具のカルチャーを日本に根付かせた、「IDEE(イデー)」創業者の黒崎輝男が、イデー代表を退任後、「物質的には十分豊かになったこの時代に必要なのは学びである」として、「自由に学び、自由に教え合う組織」を目指す「自由大学」を構想。この構想に賛同した若者数名が創立コアメンバーとなって、2009年6月に東京・世田谷区池尻で開校したのがはじまりだ。(2014年より現在の表参道へ)

ここでは、ひとつのテーマについて1回90分・全5回で学ぶ講義スタイルで、これからの生き方や働き方などをテーマにした、ユニークで実践的な講義が行われている。受講可能な講義概要は自由大学HPのトップページで随時更新中。各講義の教授は、テーマになっている働き方や生き方に関して実績のあるプロが務めているため、専門的なスキルが身に付きそうだ。

早速、働く女性の受講率が高いという2つの講義を体験受講してみた。前編では「自分の本をつくる」講義の受講レポートをお届けする。

10万部作家が教える「自分の本をつくる方法」

講義「自分の本をつくる方法」 教授 深井次郎さん

本来は1回目から受講するのが決まりだが、特別にお願いして、第4回目と5回目の講義に参加させてもらった。この講義の目的は、文字どおり、受講生が本を書いて出版するためのノウハウを身に付けることにある。教授は、自由大学の総合ディレクターとして創立時から関わってきた深井次郎さん。「自由の探求」がテーマのエッセイ本「ハッピーリセット」など、累計10万部の著作を持つプロの作家だ。自由大学で、出版に関する講義を担当して10年になる。

講義室に入ると、どんと置かれた大きな長机を囲んで、15人ほどの受講生が講義の始まりを待っている。不思議な緊張感が漂っており、私語もなく、全員が同じ冊子に真剣な表情で目を落としていた。

何の冊子かと尋ねると、この講義のために深井さんが作ったオリジナルテキストだという。

見せてもらうと、「本は5冊以上でないと書店で平積みされないので、必ず5冊以上納品してもらう」に始まり、「具体的な事前告知の方法」「出版後、最も押さえるべき書店名」など、本を出すことはもちろん、出したあとに、最低限1度は重版がかかるための実践的な教えと情報が詰め込まれている。この教科書をもらえるだけでも、授業料を払う意味がありそうだ。

受講者のほとんどは20~40代の女性で、職種はさまざま。「既に何冊か料理の本を出しているが、どうしても出したいタイ料理のレシピ本の企画が出版社で通らないので、企画書の作り方を学びに来た」という人もいれば、「本は作りたいが、テーマはまだこれから」という人もいて、本作りの経験値も各人各様だ。