第6回は発表会! 最終講義が本づくりのスタート

最終第6回目の講義は、受講生たちが、それまでの授業で固めた「作りたい本の概要」と「本作りに向けての今後3カ月の作業計画」を、皆の前で話す発表会だ。

マインドフルネス、英会話、料理、キャリアの作り方など、作りたい本のテーマや内容は各人各様。発表を聞いていると、なんと、この講義を受けるために沖縄から来た! という受講生もいたので驚いた。

中には、先ほどの深井さんの講義を聴いて、考えていたテーマが本当に本にするべきものなのか迷いが生じた受講生もいたようだ。「まとめた資料がここにあるんですが……今日の第5回目の講義を受けて、このままでは発表できないなと思いました。これから1カ月ほどかけて、あらためて自分のこれまでの経験を棚卸しし直して、3カ月後までに、新たな概要書を作り直してきます」。こう述べた受講生に対して、他の参加者からエールの拍手が送られた。

スタート地点に戻って出直すことになったようだが、真剣に講義に向き合ったからこその決断だったのだろう。ちなみに、この講義では、終了した後も、過去の受講生を含むコミュニティが作られており、その後の作業の進捗にフォローやアドバイスをもらえる機会も確保されている。

すべての発表が終わり、深井さんから受講生一人ひとりに卒業証書が手渡され、そのまま横の部屋で打ち上げパーティが始まった。講義前や休憩中の静けさと打って変わり、みんなよく喋り、よく笑う。

書くことは「小さな社会貢献」にもなりうる

どのような想いで10年間も講義を続けてきたのか? 深井さんに話を聞いた。

「書くことは、誰かの役に立とうと願う行為。贈与であり、小さな社会貢献にもなりえると思っています。大きな社会貢献は難しくても、書くことなら誰にでもできますよね。例えばあなたが勇気を出して告白した失敗談で、まだ会ったことのない遠い街の誰かが少し笑顔になったりする。ぼくはそういう贈与精神であふれる出版界であって欲しいんです。SNSによって一億総作家の時代になりましたが、誰かの幸せを心から願って書く人が増えれば、増えた分だけ、世の中がさらに明るくなるのではないでしょうか。いきなり本作りはハードルが高いという人も、ぜひSNSやブログで、自分の経験や誰かの役に立ちそうなことを、文章にしてアウトプットすることをおすすめします。キーワードは、“誰かのためのアウトプット”です」

今までの自分にとっては当たり前の経験や興味の積み重ねを、誰かのためになればと、文章にしてアウトプットすること。それが思いがけない力になって、自分自身の人生だけでなく、見ず知らずの誰かの人生も豊かにする。前向きに学ぶ姿勢と新しい環境に飛び込む行動力さえあれば、そんな未来を作ることが誰にでも可能になるんだと実感させてくれる講義だった。