完全オリジナル教材で学ぶ「心を動かす表現」
時間になり、深井さんが教室に現れ講義が始まった。冒頭は質問タイムだ。「インタビュアーへのアポの取り方は?」に始まり、「出版社へ提案書を持ち込む方法は?」「印税はどんなしくみになっている?」など、一人ひとりがぶつける疑問に、深井さん自身の経験に基づいた具体的で実践的なアドバイスが送られる。
質問が止むと、「今日は20ページから」と講義がはじまった。今回の講義のテーマは「心を動かす表現を生み出すには」。テーマに沿って、効果的な表現の型や、出版社への提案書づくりのコツが紹介されていく。
「一番重要なのはタイトルと出だし。当たり前ですが、1行目が面白くないと2行目は読んでもらえません。一行目はなるべく短く、食べやすく!」など、文章作りの基本から話が始められる。そして、「僕が素晴らしいと思った1万5000冊の本を独自に分析した結果、本のタイトルは『問いかけ系』『勝手に決めつけ系』『チラリズム系』などの、12パターンに分類できることがわかりました。今回はそれらの特徴と例をご紹介します」など、ここでしか聞けない本づくりの貴重なノウハウが惜しげもなく披露されていく。
紹介する書籍のタイトルがユニークだと、深井さんが「これは気になっちゃうでしょー!」や「これ何!?」とツッコミを入れながら話を進めるので、そのつど教室内が笑い声に包まれた。誰もが真剣だが殺伐とはせず和やかな雰囲気に包まれているのが、この講義の特徴であり魅力になっている。
個人的にも勉強になり、大きくうなずかされたのが、「書き始める前にまず、これから書こうとする内容を1行で、“問いと答え”に整理してみてください。その1行を睨んでみれば、それを膨らますことで面白くなる話なのか、本当は書く必要がない内容なのかが分かります」という「QA法のススメ」。書き始める前にその内容の是非をチェックできる。これは本づくりに限らず全ての企画について、形にする前に「本当に形にすべきかどうか?」を判断できる良い手法である。
こんな風にして、最後まで、内容が濃くて学びの多い講義が、明朗な声でスピーディに続けられた。印象深かったのが、参加者たちがメモを取る音だ。「自分が受けたいからお金と時間を使って学びに来た」という本気の姿勢がひしひしと伝わってくる。
第5回の講義が終わり、トイレ休憩。だが、誰一人教室を出る者はなく、休憩時間も、黙々と教科書のページや発表資料を繰っている。