研修の内容を受け入れられなくてもいい
研修後、締めくくりの言葉の意図を吉村さんに聞いてみた。企業研修は、聞いた内容を実践や成果につなげるために行われることがほとんどだ。それなのに、freeeでは研修内容を受け入れることすら求めない。
「研修の目的は『あなたと私は違う』という価値観を伝えることにあります。もちろん受け入れてもらえたらうれしいですが、一定の行動や価値観を強要するのは違いを認めないのと同じ。特にLGBTに関しては、飲み込むまでに時間がかかる人もいると思うので、すぐ理解してもらおうとは考えていません」
吉村さんが室長を務めるダイバーシティ推進室は、2018年2月に設置された。もともと、同性パートナーも配偶者と同等に扱うなど、ダイバーシティに関してはかなり進んでいたfreee。だが、社員が急速に増えたため、マイノリティにあたる人の声が埋もれてしまわないようにと同室が設けられた。
入社時の自己紹介でカミングアウト
業務内容は、LGBT研修や「ダイバーシティよろず相談窓口」の運営、LGBTイベントでの発信活動など多岐にわたる。その成果は大きく、最近では入社志望者やユーザーにも、ダイバーシティへの取り組みに共感してfreeeを選ぶ人が増えているという。
「取り組みの成果は社内でも感じます。以前、研修後にLGBTではない社員が『うちのパートナーが~』とサラッと話していて、なんてアライなんだろうと感動しました。研修ではいつも、どう言えば誤解なく伝わるんだろうと試行錯誤しているので、手応えがあるととてもうれしいですね」
吉村さんは、freeeの「あえて、共有する」という価値観に共感して入社。この共感を行動で示したいと考え、入社初日に全社員に送る自己紹介メールでレズビアンだとカミングアウトした。前の職場では言えなかった事実。パートナーも「無理に言わなくても」という考えだったが、24時間悩んだ後、思い切って送信ボタンを押した。