【森岡】読書の楽しみはまるで“窓”のようなものですね。開けば、いろいろな世界が見えてくる。

【間室】本当に! 平安王朝の日本や南北戦争の米国へ、いつでもどこへでも心の旅ができちゃう。例えば『パリのすてきなおじさん』(※11)を読めば、パリジャンたちの生き方を通して日々の暮らしや移民、政治まで、花の都の今がリアルにわかるの。

【森岡】最後に、間室さんが最近気になる小説家を伺いたいです。

【間室】『独り舞』(※12)で性的少数者としての孤独を描いた李琴峰さん。彼女は台湾出身で、作品を日本語で書いているんです。フレッシュなテイストがすてきです。それから、2018年の本屋大賞受賞の辻村深月さん。

【森岡】おすすめの小説はあります?

【間室】彼女の『青空と逃げる』(※13)は逃亡劇ですが、マッチョな男性が主人公ではなく、母と幼い息子の逃避行。親子の成長も読みどころです。

【森岡】こうしてみるだけでも、本当にさまざまな本があるものですね。

【間室】本は、読んだら人に教えたり話したくなる究極のコミュニケーションツール。読書を通じて、世界をどんどん広げましょうよ!

(※11)金井真紀(文と絵)ほか/柏書房(※12)李琴峰/講談社(※13)辻村深月/中央公論新社

間室道子(まむろ・みちこ)
代官山 蔦屋書店 文学コンシェルジュ
1960年生まれ。一枚のPOPでベストセラーを生み出し、雑誌、テレビなどのメディアでオススメ本を紹介するカリスマ書店員。「婦人画報」で隔月連載中。
 

森岡督行(もりおか・よしゆき)
森岡書店 銀座店店主
1974年生まれ。神保町の老舗・一誠堂書店で修業し、独立。現在、銀座にて1冊の本を売るサロン風の書店を経営。著書に『荒野の古本屋』(晶文社)など。
 

構成=齋藤規子 撮影=アラタケンジ