究極の働き方改革は「仕事と愛」の実現

フリーアドレス制がうまく浸透しない企業も少なくないが、金子さんは「コスト削減重視のために社員にメリットが感じられなかったことが大きいのでは。ABWは面積を効率よく使い、社員のメリットを増やしていく“人重視”であることを、社員自身が受け止めている」と分析。

(上)資料も私物も、45cm四方のロッカー1つ分のみ(社長も同様)。毎朝、ロッカーからPCを取り出し、その日の気分に合わせたスペースへと移動。(下)空港ラウンジをイメージした、フットマッサージャーなども完備された仮眠可能なエリア。

だが、増収増益でも坂口社長は楽観していない。「ABWのおかげというのは正しくない。業績が上がっているとうまくいっているように見えるが、真価が問われるのは景気が悪くなったときに、どこまで稼げる力がついているか。それを確認するまでは成功か、失敗かの判断は早い。ABWだから社員間の交流がおのずと進むわけではありませんし、会社として交流する工夫を継続して提供すること、経営者が口を酸っぱくして言い続けることが大事」だと語る。

同社は「CBREで働くことは、一人一人が責任と権限を持ち、日々、進歩する」ことを理念に掲げる。この企業文化を実現するには、社員の自主性と能動性の発揮を前提とするワークプレイス改革に終わりはない。現在も過去の不動産取引データや日々の営業活動のデータをインプットした、情報の“見える化”や、マネージャーによる少人数制管理など、ワークプレイス活性化に向けた取り組みを続ける。

坂口社長は究極の働き方改革は「ワーク&ラブ」の実現にあると語る。「精神分析学者のフロイトは仕事と恋愛は人格形成の根幹をなすと言っています。人生において重要な仕事と恋愛、そして企業としての成長をどう両立できるかがカギです。愛について私は何もできませんが、それぞれワークライフバランス(WLB)の中で愛を育んでもらい、仕事のやりがいと会社の成長との両立を最終的にめざしたい」

仕事と愛の実現。ワークプレイス改革に秘められた思いは深い。

撮影=田子芙蓉