ワークスペース改革は、マネジメント改革

しかし、ABWの明確すぎるコンセプトを実現するのは、口で言うほど簡単ではない。

(写真上左から)ビル営業1部 部長 梅原一徳さん、不動産売買仲介部門 シニアディレクター 佐藤顕尚さん(写真下左から)宮田光さん、古庄花梨さん、瀬島咲希さん。「フレキシブルな働き方が可能なぶん、セルフマネジメント力が問われる」と、気を引き締める。

快適な執務環境に加え、眼下には皇居の森や東京駅が望める誰もが憧れるオフィスだが、組織運営など働く社員にとっては従来のマネジメントスタイルの変革が必要となる。坂口社長は「ABWにすることによって足りないものがあぶり出されてきます。お互いの机が向き合う島型のレイアウトだと部下の管理がしやすかったが、バラバラになることで中間管理職のマネジメント力も問われます。さらにITが使いこなせないとうまく回すことができないのです」と指摘する。

おなじみの島型は、課長は端に座って部下を見渡し、その上の部長は部全体を見渡せる配置になっている。部門の帰属意識や一体感を重視する日本的な集団主義の風土に根ざしたものといえるが、CBREのオフィスはそれとは真逆の存在だ。実際に移転した当時の社員たちの衝撃は大きかった。

不動産売買仲介部門のシニアディレクターの佐藤顕尚さんは、新しいオフィスに足を踏み入れた瞬間「これは無理だぞ」と思ったという。

「30年近く固定席で過ごし、配線でつながれた自分のPCで仕事をしてきました。紙の書類も机や足元にどっさりあるのが当たり前。これからどうやって仕事をすればいいのか途方に暮れました」

25人の部下を抱えるビル営業本部ビル営業1部部長の梅原一徳さんも「本社に異動になり、メンバーの把握に力を入れていたタイミングでの移転。固定席時代は部下に相談しやすかったのに、移転後は部下たちがどこにいるのかわからない。最初はそれが気になって仕方ありませんでしたが、2週間であきらめた(笑)」。

もちろん移転前の9カ月間、経営ビジョンに基づくオフィスのコンセプトは社員に徹底的に説明した。「なぜ変革に挑むのか、毎日の働き方がどう変わるのかを説明し、自分の一日の働き方を意識したイメージトレーニングもしました。しかし4年前はこうしたオフィスの事例がなく、誰もが不安を感じていました。立場的にもっとも難しかったのが中間管理職。実際は移転後にマネージャー自身がどうすればよいかを考え、互いのアイディアを共有するなど自分たちのスタイルを探していくことになったのです」(金子さん)

まさに悪戦苦闘。梅原さんも開き直り、部下の動きを把握するため1対1のワンオンワンミーティングを積極的に設定することにした。