不動産サービス大手CBRE。同社が導入するアクティビティベース型ワークプレイス(ABW)は、社長も管理部門も例外なく固定席はない。フリーアドレス制を超えるABWは、社員一人一人の「意識」と「働き方」をどのように変革させたのか。現場をリポートしよう。
ニューヨークと名付けられたワーキングエリア。スタンディング可能なハイテーブルや、PCが装備されたデスクが並ぶ。奥には、ガラス張りの会議スペースを配置。窓際にはパーティションのついた個別デスクも。

社長室もなければ役員室もない。新卒入社の社員から役員まで誰もがフロアの好きな場所で働く。2016年10月に就任した坂口英治・代表取締役社長兼CEOも、この空間にとまどった1人だ。

「前職の三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、バイスプレジデント以上には個室を与えてくれます。いわば個室カルチャーで育ってきたので最初はとまどいました。でも結果的に私にとってはよかった。実は社員をほとんど知らないまま着任したので、逆に自分の部屋がないことで何年分も早く、社員の顔や社内の動きを知ることができたのです」

経営者として坂口社長自身も生産性アップにつながったというこのオフィスは、フリーアドレス型をさらに発展させたアクティビティベース型ワークプレイス(以下ABW)と呼ばれる。働き方改革の究極の目的は、従業員が生き生きと働く環境の実現による生産性の向上にある。その一環として、長時間労働削減などの人事施策と並び、今、注目を集めているのがワークプレイス改革だ。