日本でも海外でも、大切なのは気配りの心
7つのマナーを挙げたが、基本となるのはプロトコールの5原則だ。そのなかの「序列に配慮」にあるように、上位者と下位者を明確にして行動することが求められる。一般的にはビジネスでは年功序列やレディファーストは適用されず、あくまでも立場や役職で上位・下位が決まるため、27歳の社長と40歳の部長なら、27歳の社長が上位。握手の手を差し出すのも、会話を提供するのも、上位者から行うのが原則である。
また、正式なパーティーや会議を主催するときは、その国の象徴である国旗を正しく取り扱うこと。国旗の汚損や大きさの違い、掲揚の高さの違いは、その国への侮辱や蔑視となり、トラブルに発展する場合もあるので正しく取り扱うことが重要だ。
「国旗は、プロトコールのなかでも最も重要な敬意表現として位置づけられており、厳格なルールが定められています。言い換えれば、国旗を大切に扱うことで相手国への敬意や親しみを表現できるのです。服装の一部にゲストの国旗の色を取り入れる、卓上に国旗の色のお花を生けるなどのおもてなしは、ぜひ取り入れたいものです」(上月さん)
海外ではひんしゅくかも? 気をつけたいNGマナー
(1)女性秘書だけが、ボスの荷物を持つ
男性が上位者であっても、女性だけに重い荷物を持たせることは慎みたい。男性上位者が「レディファーストも知らない人」だと思われてしまうので、このことを念頭に入れて女性も行動しよう。
(2)初対面の取引先に、菓子折りを持参する
特に欧米のビジネスでは、日本のように、初対面でお土産を渡す習慣はまずない。贈り物をする場合は、取引先の贈答ルールを確認したうえで、負担にならないものを適切な場面で贈ろう。
(3)ひと目でわかるブランド品を、上位者が持つ
高位者(皇族や王族)や社会的な上位者が身につけるものは、人々から注目され、商品の宣伝にもなってしまう。このことから一流のエグゼクティブはひと目でわかるブランド品を公では持たない。
一般社団法人日本プロトコール&マナーズ協会理事長
校長を務める「ノブレス・オブリージュアカデミー」には活躍中のマナー講師らがさらなる研鑽を積むために全国から訪れる。「JOC国際人養成アカデミー」等のプロトコール講師を務める。
イラスト=なかのりか