格式の高い店では、どんなテーブルマナーが必要とされるのか。高級レストランを含め年間800回の外食をする浜田岳文さんは「日本人はマナーを勝手に捏造する人が後を絶たない。しかし本当に気にするべきテーブルマナーと、マナー本に載っていてもまったく気にしなくてよいテーブルマナーを見極めることが大切だ」という――。

※本稿は、浜田岳文『美食の教養 世界一の美食家が知っていること』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。

マナーよりも快適さのほうが重要

海外の高級レストランや「グランメゾン」と呼ばれるような国内の格式の高いレストランに行くとなると、テーブルマナーが心配という方も少なくないかもしれません。しかし、そこまで細かなところは気にしなくてもいいと僕は思っています。

たとえば、ナプキン。膝の上にサービススタッフが置いてくれるとき、対角線で半分に折って三角の形に置かれることがほとんどですが、僕は四角いほうが使いやすいので、四角に自分で折り直しています。何が正解なのか、気にしたこともありません。

食事が終わったらナプキンをどこにおくか。お手洗いなどで中座するときにどうすればいいか。いろんなことをいう人がいますが、正直どうでもいい。何も考えず、適当にテーブルの上に置いておけばいいだけです。

食事が終わったかどうかは、皿の上のナイフ、フォークで意思表示ができます。ナイフとフォークをお皿の上で揃えていれば、持っていってくれますし、開いていれば持っていかれることはありません。揃え方は、国によって横一直線だったり斜めだったりするようですが、それも気にしたことはありません。

皿の上に置かれたカトラリーが示す意味
写真=iStock.com/JAlcaraz
※写真はイメージです

ナイフ、フォークが事前に複数並んでいる場合、どう使うか、というのも日本のマナー本ではよく見かけますが、そもそも大規模なバンケットでない限り、こういう状況は稀です。お皿ごとに替えてくれるか、もしくはカジュアルなお店だと使い回すのが一般的だからです。事前に並んでいる場合は、基本的には外側から使っていけばいいのですが、これも過敏になる必要はありません。ナイフ、フォーク両方使う人もいるだろうからということで両方セットされていても、実際フォークだけで食べ終わってしまえば、数が合わなくなる。それで問題ありません。また、多めに使ってしまったら、サービススタッフが補充してくれます。なので、シンプルに、自分が食べやすいものを使って食べたらいいと思います。

昔は、ライス皿のご飯はフォークの背にのせて食べる、なんていう謎マナーが日本ではまことしやかに語られていました。なんでそんな食べにくいことをしなければいけないのでしょうか。バランスを取って上手くのせて、と考えていると、気が散って楽しめなくなってしまう。フォークを右手に持ち替えて、すくえばいい。食べたいように食べたらいい。日本人はマナーを作るのが大好きなようで、勝手にマナーを捏造ねつぞうする人が後を絶ちません。根拠のあるマナーもあるのでしょうが、基本、他人に不快感を与えなければなんでもいいと思っています。