社内フロアをジグザグに歩いてメンバーと話す
日産を辞めることになったのは11年のこと。「30代の頭に1度諦めたMBAをどうしても取りたくて」と、エグゼクティブMBA(EMBA)取得のため、パリへ。
日本に戻り、「自動車はもうやめよう。ファッションなどの女性商品を扱う業界に行きたい」と思っていたとき、アメリカの通販大手の日本法人、QVCジャパンから声がかかった。
「ファッション、コスメ、ジュエリーなど、女性商品の分野でマーケッターとして挑戦する仕事なので、面白いことができそうだと思いました」
実際、自ら人を採用し新しいチームをつくる経験は新鮮だったし、日本の事業を見ながらグローバルベースで組織改革するというダイナミックな仕事にもかかわることができて、仕事の醍醐味(だいごみ)を存分に味わえた。
ただし、ここでもマネジメントで苦労する場面があった。自動車会社の実績やEMBAを引っ提げて入社しても、前からこの業界にいる同僚にしてみれば“新参者”でしかない。ベテランかつ、成功体験のある他部署の同僚を巻き込み、新しい取り組みにチャレンジしていくことの難しさ。自分より年上の部下のコーチングは初めての経験だった。
「直属のアメリカ人上司は私に革新的なことを求めていたのですが、社員みんながそう思っているわけではありません」
ギャップを埋めるため、とにかく同僚や部下の話を聞いて回った。
「今でもよくやるのですが、フロアをジグザグに歩いては関係部署のメンバーと話していました。とくに、ITの施策は理解をしてもらうのに時間がかかりましたが、ちょっと苦手な人でも自分から食事に誘うなどして話を聞き、根気よく会話しましたね」