フランス駐在中「現地の女性部下が泣いた」ワケ

昇格試験に落ちて退職を考えるほどだったが、2006年に欧州市場を統括する日産ヨーロッパ(在フランス)へ、営業企画セクションのマネジャーとして赴任が決まると、やる気はぐっと高まった。現地ではさまざまな国の同僚に囲まれ、タフに渡り合うことが求められた。

(上)カー・オブ・ザ・イヤー受賞(中)パリで、息子と(下)日産時代に受賞した盾と経産省時代の公用パスポート

「日本だと真っ向から反対意見を唱えることはあまりないと思いますが、あちらではそれがふつう。みんなが自分の主張をまくし立てる中に割って入るタイミングとか、ネイティブに負けない英語の語彙(ごい)とスピードが欠かせません」

苦労はあれども丁々発止のやり取りが結構楽しかった。新しいプロジェクトを成功させ、その功績を認められて賞をもらったこともある。ただ、文化の違いから、うまくいかないこともあった。部下との関係だ。

日産ヨーロッパで管理職として、初めて外国人女性の部下を持った。あるとき、その女性に仕事のやり方や業務態度を注意した。日本なら上司として当然の姿。ところが女性は泣きだし、それから3カ月ほど仕事を放棄してしまったのだ。

「フランスでは会社でも『人は人』という意識があって、たとえ上司でも自分の仕事のやり方に干渉してほしくないという気持ちが強いんです。そのあたりの文化の違いがわかっていなかった」

結局、その部下は子会社に異動していった。それからは部下や同僚の文化的背景に気をつかうようになった。