自分がよいと思ったものを、好きな値段で売りたい

最高ランクの製品創りを目指す際、『価格決定権を持つ経営』(酒井光雄著)という本が役に立った。本に書かれている24個の設問に答えながら、自分なりのビジネスモデルを作り上げることができた。「これはイケる」という確信に近いものがあった。

利益率の低いOEMで苦労していたから、やはり自社ブランドの製品を持ち、自分がよいと思ったものを、自分が決めた価格で、自分のルートで売りたかった。お客さまと直接対話をしながら、自分たちの仕事を創っていけるからだ。本書の中で私の胸に一番響いたのは、自社ブランドを持つことの魅力だった。

最近は国産の腕時計も高くなったが、たいてい数万円台だった。対してロレックスは、当時から50万円以上した。機能的にどうかといったら、国産品とあまり変わらないだろう。それでも、人はロレックスを喜んで買っていた。なぜかといえば、「ロレックス」だから。われわれも高級ガーデンエクステリア事業でブランドを築くことを、最初から目指すことにした。価格戦略も当然それに見合うものにした。

しかし、OEM仕事や、ゼネコン発注の建築装飾金物の仕事を受けていて、値引き圧力が厳しかった分、社員たちにはブランドビジネスに対する罪悪感のようなものがあり、それを払拭するのに時間がかかった。高粗利率のビジネスモデルを提唱されている経営コンサルタントの方に、毎月1回のペースで、2年間ほど勉強会を続けてもらった。実績がある第三者から成功例などを交えて話してもらうほうが、幹部社員も理解がはやいだろうと考えたからだ。

ゼロから始めた全国約400店舗の販売網づくり

販売チャンネルづくりも、大手とは差別化する必要があった。エクステリアの問屋ではなく、街のエクステリア工事業者と直接取引することにした。自分たちのデザイン提案力や、施工力でエンドユーザーさんと直接取引している、地域一番店さんとだけ取引をするという形で、ゼロから開拓していった。現在、全国321社、約400店舗になった。

ありがたいことに、ホームセンターや商社さんが「ディーズガーデンを売りたい」と当社に来られるが、お断りしている。購買力のある大手と組むと、「ワン・オブ・ゼム」になる。私たちのような小さな会社の製品は、力を入れて売ってもらえると考えにくいからだ。また、ホームセンターで量産品の横に並べられると、自社製品の値打ちも下がる。特約店と契約する際も、私たちの想いを共有できる場合しか、取引をお願いしないことにしている。

手を組みたいと思ったら、「私たちは商売繁盛のための販売パートナーです」と宣言し、お互いがしっかり商売できるよう、私たちも最大限の協力をする。その一環で、特約店には「ディーズガーデン」コーナーを作っていただく。実物を見ていただかないと、エンドユーザーさんに理解してもらえないからだ。

特約店も「地域一番店」という条件をもうけさせていただいた。だから、どんどんとは増やせない。市場規模も決まってくる。その中で、差別化した製品で高収益ビジネスモデルを築けるのか、特約店と「win-win」の関係を作っていけるか、そこが私たちの課題であり、存在価値だ。

そもそも、住宅エクステリアはブランド戦略がない業界だった。「ディーズガーデン」が生まれるまで、おそらく自宅の門扉や外壁が、どこの製品かを知っている人はいなかったはずだ。テレビならソニーか、パナソニックかを知っているのに。

「ディーズガーデン」のビジネスモデルは、取引先金融機関からも評価されて、資金面で苦労したことはない。また、地元の京都市が、経営革新をして特徴ある事業を立ち上げている企業を表彰する「オスカー賞」を平成24年に受賞した。京都には昔から、「商いと屏風は広げすぎると倒れる」ということわざがある。私たちが1200年続いてきたのも、規模を追い求める経営をしてこなかったからだろう。