人前で話すことに自信のある人が「感じ悪い」わけ
そもそも、人前で話すときになぜ緊張してしまうのでしょうか? 理由を聞くと「苦手だから自信がない」という人が非常に多い。
そんな方に私がいつもお伝えしているのは「自信はつけてはならない」ということです。なぜなら自信のある人の話し方は、鼻につく、いやらしい印象を与えることがあるからです。あなたの周りにもいませんか? 人前で話すことに自信があり、確かに上手なのだけれど、何だか感じの悪い、好きになれない人が…(笑)。
自信という字は“自分を信じる”と書きます。自信をつけるとすれば「私は話せる」という自信ではなく、「私は準備をした」ということに対して、自信を持ってほしいのです。
「今日のこのプレゼンのために1カ月前から準備してきた」、あるいは「準備のために徹夜して頑張った」など、どれだけこのために準備してきたかということに自信を持ってもらえれば、緊張は緩和され落ち着いてきます。つまるところ、緊張は準備不足に対する心理的不安からくることが多いのです。準備するなかで「なかなか覚えられない。当日全部忘れてしまったらどうしよう」などと、不安がいろいろと出てきてしまうのですね。
ですから私があらためてお伝えしたいのは、緊張とうまく付き合おう、ということです。この連載で毎回ご紹介している“私プレゼン”を意識し、準備していることに自信を持っていただきたいのです。
残念ながら緊張は完全に消し去ることはできません。しかし、緊張はその舞台を大切に思っている証拠、準備をした証拠。悪いことではありません。どううまく付き合うかということが肝要なのです。
信頼を勝ち取る「正統派スピーチ」指導の第一人者。NHKキャスター歴17年。大学院で心理学の見地から「話をする人の印象形成」を研究し、博士号を取得。国立大学の教員として研究を続けながら、政治家、経営者、上級管理職などに「信頼を勝ち取るスキル」を伝授。
構成=池田純子 イラスト=米山夏子 写真=iStock.com