和田さんの節約は万事この調子だが、家電製品の買い方を聞くと、和田さんの節約思想が一層明確になってくる。
和田さんは家電を買い替える際、エコマークのついた家電を買うよう心がけている。当然、電気代や水道代の節約に役立つが、省エネ家電は一般の家電より数倍高い。寿命までに元が取れるかどうか微妙だ。だが、和田さんはコストパフォーマンスにあまり頓着していないのである。いま、目の前で電気や水がムダに使われていないこと自体が、嬉しいのだ。
「1週間の食材も同じことです。最終日にすべての食材をきれいに使い切ったときには、思わずヤッターって叫びたくなるような達成感があります。その達成感を味わうことが、何より嬉しいんです」
かつてわが国の主婦たちは、「始末する」という言葉を「ムダなく使い切る」という意味で用いていた。和田さんは出費に枠をはめることによって、限られたリソースを味わい尽くすという「始末」の精神を復活させているのではないか?
始末の精神は、もっと稼がねば、もっと生活レベルを上げねばという焦燥感の対極にある。和田さんのお宅に漂う幸福感の秘密は、このあたりにあるようだ。
(向井 渉=撮影)