中小企業へ広がり、地方創生にも
働き方改革のコンサルティングを多数請け負い、総務省テレワークマネジャーでもある合同会社ジョイン代表の家田佳代子さんは、テレワークのメリットとして「ワーク・ライフ・バランスの実現、通勤ストレスからの解放」を挙げる。企業側は、生産性の向上、コストの削減に加え、テレワークありと募集時に提示すると、ない場合に比べ2倍以上の応募があるため、優秀な社員の獲得にもつながるという。
家田さんは導入のハードルとして、情報セキュリティの確保、人事評価、労務管理の適正化、インフラの導入・運用コストを挙げる。導入の前に、目的を定め、どの範囲でテレワークをするのかを明確にし、社内制度を整えなければ、テレワークは機能しない。まずは現状の社内業務の効率化や社内の意識・制度改革が必要な企業が多いだろう。
また、対面コミュニケーションが希薄になるという欠点もある。しかし家田さんは、そもそも導入前に、上司・部下、関係各所のしっかりしたコミュニケーションが確立されていないという意味での「コミュニケーションの壁」を問題視する。いったんコミュニケーションの壁がなくなれば、会社でも他の場所でもシームレスに仕事ができるというのだ。
このように課題はあるが、オリンピックを契機に急速にテレワーク導入が進み、対策も充実していくと家田さんは見ている。「働き方改革にテレワークの推進が挙げられたため、大手企業の整備は20年までに8割方完了するでしょう。また中小企業からの相談が増えており、こちらでも導入が進むと予想しています」
長野県塩尻市など22の地方自治体では、テレワーク環境を整える地元企業に補助金を出すなど「ふるさとテレワーク」事業を展開。地元に戻る人を支援し、移住を促進する動きも出てきている。
テレワークは時間も場所も選ばない働き方の大きな推進力となりそうだ。
撮影=岡村隆広