【丸尾】うまく対応する人のまねをするとか、ストレス耐性を上げていく必要はあると思うんです。でも同時に、泣き寝入りはしなくていいというメッセージも伝えたい。複数の女性で、声をあげるとかもいいと思います。先ほどのケースでは「他の人は慣れっこ」のようですけど、「実は嫌だけど我慢している」っていう人もいると思うんですよね。私は嫌だって言える環境を、みんなでつくっていくのが大事ですよ。

【鬼塚】均等法11条に会社の中に相談窓口を設置しないといけないとあったでしょう? コンプラ委員会などの女性の比率は何%以上とか、そこまでは決まっていないんですか?

【山岸】いまのところないですね。でもみんなで声をあげていけば、いずれは女性が半数とかに改正されると思います。

税理士 林 良子さん

【丸尾】SNSでつながるかどうかも、たとえセクハラにあたらなくても、私生活に関わることに上司から不当に干渉されたくない、と思うのは当然のことだと思うので。そういう意味では、プライバシーに対しても、「嫌なものは嫌」って言うのが、これからの流れなんじゃないかと。

【林】国税庁や東京税理士会には電話による無料相談窓口があるのですが、弁護士会にはそんな窓口はありますか?

【山岸】法務省の「人権擁護局」、厚生労働省・各都道府県労働局の「雇用環境・均等室(部)」では無料で相談ができます。ほかに弁護士会の「法律相談センター」では15分の電話無料相談を受け付けていますから、会社に相談窓口がないときはそこを利用する方法もありますね。

【鬼塚】社外に頼るとき、電話はハードルが低くていいですね。本当に相談したほうが良いのかその手前か、ということを知りたいだけということも多いので、電話でその確認ができるだけでも安心。

【丸尾】ほかの女性たちにとってもいい方向に向かうかもしれませんから、なにかしらの行動に移すことをお勧めします。それから、もし業務中のセクハラで精神障害になったら、労災申請もできます。心配な場合は、医師の診断を受けましょう。

▼もっと詳しく知りたい人に……

「職場セクハラには2つの定義がある」
男女雇用機会均等法11条1項では「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」と定義しており、セクハラは2つの型に分けられます。

●「対価型セクハラ」……職場で性的言動をされたことで、仕事上の不利益を受けること
●「環境型セクハラ」……性的言動をされたことで、職場の環境が不快なものになって、労働者の能力に大きな悪影響が生じること

均等法は事業主に対して「労働者からの相談に応じなさい」「適切に対応するために必要な体制の整備をしなさい」「その他の雇用管理上、必要な措置を講じなさい」と義務づけています。
一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会
弁護士、税理士、社会保険労務士、FP、金融関係者、医師、不動産関係者、介護福祉関係者、不用品回収業者、印刷業者など、それぞれに活躍する実務経験豊富な各分野の専門家で構成。契約企業に出向き、介護・事業承継・相続問題のほか、夫婦・家族の問題などに悩む社員の個別相談にワンストップ・ワンテーブルで対応。セミナー研修などを行っている。
鬼塚眞子
一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表理事・FP。大手雑誌社勤務後、出産のために退職・専業主婦に。その後大手生命保険会社の営業職として社会復帰。業界紙記者を経て、保険ジャーナリスト、FPとして独立。認知症の両親の遠距離介護を機に、同協会を設立した。
丸尾はるな
弁護士。弁護士登録7年目で独立し、「丸尾総合法律事務所」開設。弁護士歴約10年でありながら、個人の一般民事事件、家事事件、企業の法律相談、訴訟案件など、幅広い相談に対応し、時代にあわせたサポートを行う。
山岸潤子
弁護士。仕事と子育てを両立する、弁護士歴約20年のベテラン。非常勤裁判官経験もあり、現在は東京家庭裁判所調停委員も務める。子どもの権利委員会、少年法委員会、男女共同参画推進プロジェクトチームほか、多くの弁護士会の活動にも携わる。
林 良子
税理士。一般企業の経理などをしながら税理士試験に合格。現在は内山・渡邉税理士法人の社員税理士であり、租税教育の講師も行う。得意分野は資産税(相続税・譲渡所得税)を中心とした税務コンサルティング、法人税、所得税の節税対策。

編集・構成=干川美奈子 撮影=干川 修