目の前にある仕事に真面目に取り組めば、必ず道は拓ける

目の前にある仕事に一生懸命取り組みさえすれば必ず道は開ける、助けてくれる人もいる。そう教えてくれたのは、紛れもなく母です。企業の経営者を10年、市長になって7年。思い悩むたびに、“その日その日をしっかりと生きていく”母の後ろ姿を思い出し、勇気づけられています。

(上)3人で暮らしていた頃の写真が並んでいる。(下)「私が幼い頃までは幸せに暮らしていたと思います。この後、伯母との関係に悩み父は家を出てしまいます。でも、母は心から愛していたようで、たまに帰ってくると世話を焼いていましたし、身勝手な父を許し、添い遂げました」

今、働くお母さんたちは、子育てに十分な時間がとれず、“子どもにすまない”と自分を責めたりしているかもしれません。でもそうした方には「お子さんは、あなたの一生懸命な後姿を見ています。だから大丈夫」と言いたいのです。子どもとの時間が十分に取れなかったり、一緒にどこかに出かけたりしなくても、やがて子どもは必ず親の愛を理解する日が来ます。

日本ではまだまだワーク・ライフ・バランスが進んでおらず、子育ても介護も家事も、女性が担うことが多い現実があります。だからこそ私は、苦労している人たちが横につながり、本音で語り合えるようなネットワークや学びの場を提供していきたいと考えています。働く女性の支援にしっかりと取り組み、女性が働きやすい、働きがいのある社会をつくることが、私の使命だと考えています。

 
林 文子
神奈川県横浜市市長。1946年、東京都生まれ。東レなどを経て、77年ホンダ販売店に入社。その後、BMW東京代表取締役社長、ダイエー代表取締役会長兼CEO、日産自動車執行役員などを歴任。2009年8月、横浜市長に就任、現在2期目。14年、在日米国商工会議所「パーソン・オブ・ザ・イヤー」など受賞歴多数。

蓮池由美子=構成 荒井孝治=撮影