初の育休取得からの復帰。戻るたびに意欲は増した
それから10年以上が経ったいま、八州の社内の雰囲気は様変わりしている。オフィスは2度の移転を経て、新しいオフィスビルへと変わった。また、GPSやCAD、空撮写真の処理などはデジタル技術の進化によって、多くの作業がコンピュータ上で行えるようになった。そのため測量の機器は必要なくなり、近年では女性の技術者も増えている。
そんななか、2児の母でもある新明さんは、同社における女性進出のモデルとなってきた存在でもある。妊娠と出産、そして育児。そのたびに上司や人事総務課の担当者と相談し、産休・育休制度、勤務時間の調整などの課題を段階的に乗り越えてきた。
「育児をしながら働いていると、保育園のお迎えや急な呼び出しもあります。何かあるたびに『どうしたらいいですか』と相談して、一緒に働き方を考えてもらいました。いま、うちに女性の技術者が入りやすくなってきたとすれば、そうした周囲の協力があったからだと思っています」
人事総務課の秋山泰一課長は、彼女との対話によって作られてきた制度は、自社の職場環境を形作る制度面の土台となったと語る。
「彼女との対話は女性に限らず、あらゆる社員にとって働きやすい環境を整えるきっかけになったんです」
例えば、子どもが熱を出し、保育園に迎えに行かなければならない状況がある。それがフレックスタイム制度の導入へとつながり、さらには「育児介護休業規程」の立ち上げに広がった。
「彼女の体験談は、採用のときも女性社員の実体験として、会社の制度がどのように活用されているかを伝えられるのは大きい。そのことで積極的に優秀な女性技術者を登用していけるようになったからです」