3. そもそも買い物が嫌い? ブランドはいらない?

フランス人はおしゃれだというイメージがある。パリの街を歩けば、Tシャツにジーンズでもなぜかキマッている女性、黒と白の普通のデザインの服をシックに着こなしている女性など、日本人とは違うオシャレさんがたくさん歩いている。それは、本当に自分に似合うものをよく吟味して選んでいるから。ブランドが好きだったり、たくさんの種類の服を持っているのとは違う。

「人それぞれ体形が違い、似合うスタイルもさまざま。有名ブランドのラインが必ずしも自分を一番美しく見せるわけではない、とフランス人は考えます」

そもそもフランスは階級社会で、ラグジュアリーブランドは一部の「セレブ」や有閑階級の人が身に着けるもの。

「月給の何倍もするバッグを20代のお嬢さんが持つことはあり得ません。もしデートに持っていったら、分不相応に高額な買い物をする家計管理能力が疑われます。また、一体誰に買ってもらったのかと相手は不審に思うし、面白くないでしょう」

フランス人はブランドの価値を認めはするが、自分に似合うかどうかは別だと考えている。似合わないものや、自分の収入で買えないものをそもそも最初からほしいとは思わないのだ。

吉村葉子
神奈川県生まれ。立教大学経済学部卒業。生活文化研究家。20年間のパリ滞在経験を通じ、フランスおよびヨーロッパ全域を対象に取材、執筆を続ける。近著に『人生後半をもっと愉しむ フランス仕込みの暮らし術』(家の光協会)。

イラスト=ヨーコチーノ