▼経営コンサルタント 小紫恵美子さんから
提言:男性の未婚率4割近く。「妻に任せて長時間労働」は不可能に

長時間労働について現行法での取り締まりを強化する、との政府の取り組みに基本的には賛成です。ここまで放置してきてしまったこの問題に、事態はもはや一刻の猶予もありません。

男性の35~40歳の未婚率が4割近くに上昇する(*1)中、5年後には介護に直面する男性が増えることは確実。今までのように、「妻に任せて」仕事に24時間まい進とは、もはやできる状況にありません。長時間労働は女性だけでなく、むしろ管理職の9割を占める男性にとって、きわめて近い将来「できなくなる」可能性が高いのです。要職についている人が辞めざるをえない職場が続出することは企業経営に大きなマイナスです。

また、今後は高齢化に伴い、闘病しながら働き続ける人も増えます。2010年の厚労省データでは、全国でがんの治療をしながら働いている人たちは19万5000人。治療にはお金もかかるため本来なら働き続けたいにもかかわらず、退職を余儀なくされている人たちがいることも見逃せません。

ただし、時間を制限するだけでは、実際には仕事を持ち帰ったりする隠れ残業を増やしてしまうことにつながる恐れもあります。そのため現場で課題となるのは「評価」です。限られた時間の中で効率的に仕事を進めて結果を出す人がきちんと評価される仕組みが必要です。

ホワイトカラーエグゼンプションなどの動きもありますが、働き方はすでに多様化しており、この規制緩和で労働時間が増える属性、減る属性が存在すること、日本では長時間働いている人が昇進しやすいことも報告されています(*2)。法律の適用対象を慎重に選ぶこと、そして、法律のみで解決するのではなく、成果を何で測るのか職場で経営サイドと従業員とで確実に同意されなくてはなりません。

*1:2010年国勢調査より
*2:黒田祥子・山本勲著「ホワイトカラー・エグゼンプションと労働者の働き方」より

佐藤留美=構成 文=小紫恵美子(提言) 市来朋久=撮影