【竹中】ただ80時間の限度を超えると問題なので、それ以上働いた場合は、産業医に相談するなど、制度面のフォローが入るといいなと思います。
【清水】それに、出産などのライフイベントがある女性が男性と同じ長時間労働を求められると、私生活などいろいろと捨てなくてはいけないじゃないですか。私なんて、いっとき、長時間労働をしすぎて、ヒゲが生えてきたことがありましたよ(笑)。そもそも、日本は頑張ったら頑張っただけの恩恵にあずかれないのが問題。つまり、個々人の仕事の役割に対して明確な「このお仕事はいくら」みたいな値付けがなされていないので、頑張れば頑張った分、どんどん苦しくなっていく(笑)。
【竹中】つまり、同一労働同一賃金の考え方が浸透していないし、明確なジョブディスクリプション(職務記述書)もない。
【清水】私が今いる外資系企業は、一人一人の職務に明確なミッションがあるし、役割が決まっているんです。だから、それが終われば、さっさと帰る。逆に、仕事が回らない場合は、その期間限定で派遣社員を入れるなど融通がきくんです。お給料は、自分たちができる仕事に対してもらっているので、それを超える場合は、評価やミッションをセットで変えていきます。
【富山】それは理にかなっていますね。ところが日本の場合、在宅勤務だったら在宅勤務、残業禁止だったら残業禁止とパッチワークで働き方を変えようとする。その根底にある、カルチャーや評価、ミッションこそ変えなくてはいけないのに。つぎはぎで、「在宅勤務制度入れました」では、制度が有名無実化するだけです。
【竹中】本当ですね。少子化=残業時間を減らせば何とかなるっていうわけではない。
【富山】少子化=保育士の給料を2%上げれば良いってわけでもないんですよ。
【清水】もっと根本の、職務規定を変えるところから手をつけないといけませんよね。
▼「長時間労働の規制」に関する要望書
残業規制の見直しについて下記により要望いたしますので、宜しくご配意賜りますよう、切にお願い申し上げます。
(1)取り締まりの対象を100時間から80時間にしたところで保育園のお迎えには行けないのですから、少子化対策にはなりません。何のために実施しようとしているのかをご再考ください。
(2)取り締まり強化だけでは、かえって仕事の持ち帰りやサービス残業が増えるだけ。短時間労働で生産性を上げている企業を税制などで優遇するようにしてはどうでしょうか。
以上 第15回 座談会参加者 一同