近藤さんには力みといったものが見当たらない。役員就任の言葉を受けたときも、自分の心臓が止まったときも「あらら」と、もう一人の自分がいて見ているよう。自然体、あるいは達観したそのスタンスが何でも相談できる役員像をつくりあげている。
執行役員の辞令に「あらら会社も思い切った」
2015年4月、社内で女性初の執行役員となった近藤智子さんがその話を受けたとき、それほど驚きはなかったという。少しさかのぼる2月、社長秘書から「○月○日は空いていますか」と連絡が入った。
「そのとき、私のポジションは理事だったので執行役員の可能性はありました。社長から『執行役員です』と言われ、『あらら会社もそこまで思い切ったか』といった感じでした」
居並ぶ執行役員の中で一番若かったが、これまでも女性のトップランナーだった近藤さんにとっては慣れっこだったのだろう。
現在の役割はコンタクトセンターのとりまとめと業務品質の向上。
「当社は2010年、11年と合併がつづき、それに関する苦情が増えたんです。それを減らすことに力を入れ、ようやく落ち着いてきたので、次はもう少し広く目を向けたいと思っています」
たとえば全国の部支店に業務品質を議論する委員会を設けていて、地方へ出向いて話をすることがある。心掛けているのは「自然にそこにいる感じ」だ。部下の一人に聞くと、怒った顔は一度も見たことがないとか。いつでも報告しやすい、相談しやすい執行役員なのだ。