四苦八苦しながら英語でやりとり
近藤さんが合併前の千代田火災海上保険に入社したのは1983年のこと。
「まだ第2次オイルショックの影響が残り、就職難でした。大学で債権法のゼミを取っていて、損害保険はバリエーションがあっておもしろいと感じていました。当時女性を総合職で採用していた損保が2社ありました」
そのうちの1社に総合職として入社。同年、同じ総合職として採用された女性は、自身も含めて約10人だったという。配属されたのが再保険外国部。
再保険とは、保険会社が引き受けたリスクの一部を他の保険会社に転嫁することでリスク分散を図る方法だ。その部署でアンダーライターとして再保険の引き受けを担当。相手にするのは海外の保険会社。英語は堪能?
「いえ、TOEIC(R)を受けたこともありません。就職面接で『英語は好きですか?』と尋ねられ、『はい』と答えましたが、会社もそれでよく配属したなと(笑)」
最初は電話もドキドキし、外国人のお客さんが来ると、あらかじめ覚えておいた英語を話し、あとは上司にフォローしてもらった。しかし、だましだましでは太刀打ちできない事態が待ち受けていた。約1カ月の海外研修だ。
「人生で初めて英会話教室に通いました」
海外研修は社長からの“ご褒美”だった。
入社2年目、近藤さんは損害保険事業総合研究所の損害保険講座を受講。さまざまな損害保険会社から何百人と集まり何カ月にもわたって勉強し、1カ月に1回試験がある。最後に順位を出したとき1番になったのが近藤さんだった。それを社長がたいそう喜んだ。
「過去に男性で1位になった社員もいましたが、その人たちは海外研修に行かせてもらっていません。女性でちょっと得をしたかな」