「地下」の世界を知って視野が広がった

齋藤さんは工学部の出身。幼い頃から機械が好きで、時計やカメラを分解しては母親に怒られるような子どもだったという。

就職活動では大手電機メーカーを中心に受けた。多くの人が使うインフラ事業に携わりたいと考え、2011年に明電舎に就職した。

(上)異業種の人とも積極的に会話。物おじしない性格は父親ゆずりだとか。(下)社内の打ち合わせは午前中に入ることが多い。後輩ができた今は、指導者の役割も担っている。

電機メーカーの研究職の多くは大学院卒で、研究室の教授推薦を受けた者がほとんどだ。そんななか、彼女は学部卒の「自由応募」で入社した珍しいケースだった。入社後2年間は、浄水場の「浄水膜」の試験や開発に従事して経験を積んだ。

いま、下水管に入る日々を送っていると、いかに都市の地下空間が広大で複雑であるかを実感する、と彼女は目を輝かせて語る。

「まさか自分がマンホールの下で仕事をするとは思ってもいませんでした。でも、みんなが歩いている地面の下に、これほど広大な地下空間があることを初めて知った。以来、街の見え方が変わったように感じています」

毎年のようにゲリラ豪雨による冠水が各地で起こる昨今、地下空間の水位の上昇を予測するシステムを作る仕事には高い社会性がある。このシステムが全国で導入されれば避難計画の精度が上がり、多くの人命救助につながるだろう。そのことも大きなやりがいの一つだ。

「入社して数年は、事業全体の一部しか見ていませんでしたが、新規事業では営業から現場でのシステム導入まで、全部を一人で見ることができます。成功したときも失敗したときも自分の責任なんだという気持ちが、一番のやる気につながっています」

▼上司が思う「齋藤さんのここがスゴい!」
・活発で元気! 明るい
・何事にも探究心を持ち、根性がある
・後輩思いで、忙しくてもよく面倒を見る

冨田寿一郎=写真 YOSHIE=Hair&Make-up 撮影協力=東京都下水道局