おじさんたちは人に優しくしてほしいだけ

【田中】河崎さんが疑問に思っていることは、自分が年を重ねてわかったことでもありますが、「勘違い」ということだと思うんです。

【河崎】ほうほう。

【田中】今感じるのは、「もう少し優しくしてほしい」。おじさんは誰にも優しくしてもらえないじゃないですか(笑)。若い女の子が働きすぎると同情されるけど、おじさんが働きすぎて疲弊していても誰も「大丈夫ですか?」とは言わない。おじさんたちは誰かに優しくしてほしいんです。でも、そのときに想像できるのが「若い女性にモテたい」という回路しかない。人から「大丈夫?」とか「働きすぎじゃないの?」と言われるだけで解消するはずなのに、「ああ、疲れた。若い女に癒してほしい」という回路しかないんです(笑)。

武蔵大学社会学部助教 田中俊之氏

たとえば、駐輪場でカゴが引っかかって自転車が出せないことってよくありますよね。若い女性も若い男性も、おばちゃんだって助けてもらえますけど、おじさんは誰にも助けてもらえませんよ(笑)。おじさんはずっと自転車をガチャガチャやるしかなくて、まわりから「うるさいなぁ」と思われてしまう。そこでおじさんが誰かに優しくされれば、「あ、俺は優しくされたかっただけなんだ」と気づくと思います。おじさんになって優しくされたことがないという経験が、「若い女性にモテないと救われない」という妄想を維持させているのです。

【河崎】なるほどね!

【田中】私自身がないがしろにされて思い至りました(笑)。「僕は人に優しくしてほしいんだ!」と。

【おおた】今まで、こういうことを言える男性はいなかった。田中先生に希望を感じました。