若い頃に勝ってしまうのは、実は苦しいこと
【田中】僕の2016年のキーワードは「清原問題」。これはかなり衝撃でした。スポーツ選手は男の子の憧れの頂点であり、その中でも清原さんはジャイアンツで4番を打ち、年棒も何億円ももらっていた人です。夢をかなえたはずの人が何をやっているんですか? と。先ほど「男性は競争にさらされる」という話をしましたが、付け加えると「勝って終われない」のです。マンガなら優勝したところで終わりますが、人生は続きます。ASKAさんにも思うことですが、ピークを維持し続けることはできません。逆に、「若い頃に勝ってしまうのは苦しいことなのではないか」と清原さんを見ていて思いました。
【おおた】教育や子育てにおいてもかなり重要なテーマです。子供が東大医学部に合格するとママはすごく褒められますが、子供がどのような人生を送るかはわかりませんから。
【田中】恐怖を感じるのは、幼児の100メートル走の教室が流行っていることです。ただし、幼児の頃に勝てる体にすると、中学、高校では絶対に伸びないということが生理学的にわかっています。小学校で全国チャンピオンになる子は、絶対に将来、競技者になれないわけです。でも、親は「今」勝たせたい。……この話を聞いたとき、ゾッとしました。早く成果を求めたり、頂点に立たせたりするのは、本当は苦しいことなんです。結果、結果と言われる社会は辛いと思います。
【常見】株主対策で暴走して、いい加減なメディアを作ってしまった企業と同じですね(笑)。
【河崎】なぜ早めに子供たちに結果を求めてしまうのか、それは親が子供の将来の占いをしているのです。「ここまでできたんだから、あのへんまで行くんじゃないか」という安心感を早めに手に入れたい。そういう不安な親の心理が反映されているのでしょう。
【田中】子供にとっては本当によくないと思います。「親の期待に応えられない自分は間違っている」と子供が思い込んでしまうことがあるからです。まさに、おおたさんが書いた本のタイトル『追いつめる親「あなたのため」は呪いの言葉』だと思います。
SMAPは日本の男性像を変えた
【田中】あと、世代的に「SMAP」には触れざるを得ません。
【常見】それ、それ!
【河崎】そんなに乗るような話題ですか?
【おおた】だってSMAP存続のための署名が40万人ですよ。長時間労働撲滅の署名が4万人なのに(笑)。
【常見】SMAPについては言いたいことがたくさんある! 2016年、SMAPの解散と天皇の生前退位は大英断だったと思います。大御所が亡くなるたびに「昭和が終わった」と言われますが、平成も終わるんだ、と。キーワードはともに「降りられる」ということなんです。誰もが知ってますが、SMAPはとっくに終わっていたのに大人の事情で続いていた。SMAPはホモソーシャルで全員が仲良くてメンバーの個性尊重だと思っていたら、実際はそうじゃなかったというのは裏切りだと思ったり。あと、ジャニーズは究極の昭和モデルなんです。いまどきのヒットにネットは欠かせないのに、ジャニーズはまったくネットをやっていないんですから。
【河崎】SMAPの話題に40男たちがすごく乗ってきましたよね。木村拓哉や工藤静香を「裏切り者」とすごく叩いた。
【田中】SMAPは日本の男性像の姿を変えたと思います。SMAPはアイドルなのにコントや料理をしましたが、「おもしろい」「やさしい」「料理ができる」のは男がやってもカッコいいことにしたという大きな功績がありますよね。