大きな転機となったのは、千葉地区の国道357号の地下立体化工事の管理を約1年半に亘って任されたことだ。

それまでの仕事は少人数で比較的単純なものだったが、大勢の作業員が働く道路工事は勝手が違う。複数の協力会社がそれぞれ異なる作業を担っているため、資材の発注や管理、作業の効率的な進め方などの要素が絡み合い、元請けの責任者には複雑なマネジメントが要求されるからだ。

「現場で最も私たちが気を使うのは安全です。でも、長い工事になると、『これくらいはいいかな』という甘えが、作業員さんたちの中に出てきてしまう。また、作業や手配が遅れると、職長さんたちもかなり厳しい言葉で話をしてきます。その中で『まあ、ひろ子ちゃんが言うならしょうがないか』『よしなんとかしてやろう』と言ってもらえる関係をいかにつくれるか。それが現場監督の力の見せどころですが……」

怒鳴られ、板挟みになり自信をなくした新人時代

当初はそれがうまくいかず、協力会社の職長からは怒鳴られ、上司である事務所長からは「こんなことは小学生にもできるだろ!」と叱責されることもあり、すっかり自信をなくしていた時期が続いた。

現場には交通船と呼ばれる船で向かう。天候によっては揺れる船内も慣れたもの。信頼する船長や作業員との会話も弾む移動時間。

「でも、振り返ると、そうやって怒られながら、自分は施工管理の仕事を学んでいったんです」

現在、新海面処分場の護岸工事を監督する彼女について、先輩社員の一人は「若い男性社員と比べても負けないほど頼もしい」と太鼓判を押す。土木工事の現場で何より大切なのは、協力会社との信頼関係だ。安全上のルールや作業の手順を決める際も、「この人の言う通りにやっていれば、間違いなく仕事が進む」という信頼があって、初めて円滑に進む。

「彼女は言いたいことをきちっと言えるし、相手も遠慮なく付き合える。それが自然とできることが、この仕事の最も重要な資質です」